MAPPLE×新しいスタイル

2024年9月13日、東京都世田谷区にある「地理系ブックカフェ 空想地図」にて、地図に関する参加型イベントが開催されました。このイベントは、毎回異なるテーマを設定し、ゲストがそのテーマに沿った話をする形式で行われ、今後も定期的に開催される予定です。

<地理系ブックカフェ 空想地図の外観>

今回はその第1回目。9月は防災月間ということもあり、昭文社の広報担当・竹内が「地震と地図」について話し、学生や社会人の方々に聴講者としてご参加いただきました。イベントの様子を以下にお伝えします。

|| 広報担当プロフィール

竹内 渉(たけうち わたる)
1996年昭文社入社。地図編集部、旅行書(ガイドブック)編集部を経て2014年より広報担当。
都市地図、道路地図、世界地図、テーマ地図などさまざまな種類の地図の編集経験を元に、地図作りの楽しさ、意義を啓蒙することをライフワークとしている。日本地図センター認定のマップ・リーダー(地図専門指導者)。

 


 

)) 昭文社の地図と地震の関わり ((

竹内(以下省略):

本日は「地震と地図」をテーマにお話しします。このテーマを選んだ背景には、いくつかの理由があります。
まず、昭文社は2005年より『帰宅支援マップ』を販売しています。また、1995年の阪神・淡路大震災の際には、神戸の書店から「娯楽の本が売れないため、かわりに地図を店頭に大量に置きたい」という要請を受け、神戸を中心とした被災地の書店に納品したという経験があります。
|| 参考「どんどん地図を持ってきてや!」あのとき、書店は開かないと思っていたら実は地図を渇望していた…阪神・淡路大震災の経験⇒https://www.mapple.co.jp/blog/13424/

さらに、昭文社は自治体に対して地図を無償で提供することもあります。今年の能登半島地震でも、『分県地図』ほか各種地図を活用し、消防署や警察署、自衛隊など関係者が業務の分担を協議しました。このように、地図と地震には深い関係があるのです。

それでは、イベント前半にて「地震に関連する地図」をいくつかご紹介いたします。

<当日のイベントには12名の方に参加していただきました>

)) 被害範囲の確認に役立つ「推計震度分布図」 ((

最初に紹介するのは、気象庁が発表している「推計震度分布図」です。これは、実際の観測震度をもとに、震度計の設置されていない地域の震度を250mメッシュ単位で推計したものです。原則として最大震度5弱以上が観測された場合に発表され、推計震度4以上の範囲が示されます。

例えば、1月1日の能登半島地震では、16時10分に地震が発生し、約16分後にはこの推計震度分布図が公表されました。テレビなどのニュースでは震度計がある地点の情報しか報道されないことが多いですが、この分布図を見ると、珠洲市や穴水町などで震度6強のエリアが広がっていることが確認でき、震度計がない場所でも大きな被害が発生していることがわかります。

もし知り合いが住んでいる地域や、自分の生活に関係する地域で地震が起こった場合は、この分布図を活用して、どのような対応が可能かを考えるための参考にするとよいでしょう。

<能登半島地震のときの推計震度分布図。赤色が濃いほど震度が強いエリア>

※本コラムに掲載の「推計震度分布図」はすべて気象庁「推計震度分布図」
https://www.jma.go.jp/bosai/map.html#7/36.781/137.42/&contents=estimated_intensity_map)ほかを加工して作成、撮影したものです。

また、遠隔地で地震が発生した際、首都圏で同様の地震が起こった場合をイメージするために、被害範囲を首都圏に重ねてみることも有効です。例えば、震度6弱以上の範囲を地図上で丸く囲み、同じ大きさの丸を首都圏に置くことにより、被害範囲の大きさを具体的に理解しやすくなります。

<左:能登半島地震の震度6弱以上のエリアを赤丸で囲み、同じ大きさの赤丸を首都圏に置いてみる 右:北海道胆振東部地震で大きく揺れた地域の隣に東京都の地図を貼ってみる>

)) 状況を瞬時に把握できる「防災地震Web」 ((

次に紹介するのは、防災科学技術研究所が提供している「防災地震Web」の地図です。

この地図では、震度計で測定されたデータをもとに、日本列島全体の揺れをリアルタイムで表示します。揺れのない地域は青~緑色の点、地震が発生している地域は黄~赤色の点で示されており、地震が起こると、その震央から揺れが広がる様子を視覚的に確認できます。

速報の性質上、正確性に欠ける部分もありますが、現在の状況を瞬時に把握できる点で非常に有用です。直下型の地震であれば避難を検討したり、遠方で発生した地震の場合は、状況に応じた対応を考えたりする際に役立ちます。

)) 通行可能な道路を表示する「通れた道マップ」 ((

次に紹介するのは、トヨタの企業サイトが提供している「通れた道マップ」です。この地図は、トヨタ車のカーナビから収集された走行データをもとに、過去24時間にどの道路が通行可能だったかをリアルタイムで表示するもので、通行可能な道路は水色、交通規制のある道路は黒色、通行止めは赤いマークでそれぞれ示されます。

渋滞情報も掲載されており、日常でも便利な地図ですが、災害時にはさらに大きな効果を発揮します。能登半島地震の際、私が確認したところでは、地震のわずか2日後には通行止めの赤いマークがすでに反映されていました。この即時性の高さにより、救助隊やボランティアが移動中に二次災害を回避するための重要なツールとなります。

現在の地震対策では、まず一時待機し、安全を確保してから避難するのが基本です。この「通れた道マップ」は、移動や避難に関する具体的な判断材料となり、安全な経路を選ぶうえで大いに役立ちます。

)) 電力会社の停電情報も避難の参考になる ((

最後に紹介するのは、各電力会社のサイトで提供されている停電情報です。これらのサイトでは、市町村や大字単位での停電状況を、地図形式やテキスト形式で確認することができます。

 

私自身、東日本大震災の際に徒歩で帰宅する途中、東京電力のサイトで停電エリアを確認しながら進みました。進行方向に停電地域がある場合は、いったん前進をやめ、様子を見ながら休憩を取るなどの対応を行いました。
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参考「すぐに行動しない勇気」東日本大震災直後、40km以上も歩いて自宅を目指した社員が思う、地震時の行動⇒https://www.mapple.co.jp/blog/13443/

ただし、地震直後はアクセスが集中し、サーバがダウンする可能性があるため、被災していない方は必要以上にアクセスしないほうがよいかもしれません。

地震に関連する地図の紹介は以上となります。

後半では、南海トラフ地震や首都直下地震の想定震度地図などを確認しながら、地震後に想定される状況を踏まえて、具体的にどのような対策や対応、判断が必要かについて話し合っていきましょう。

後編へ続く南海トラフ地震や首都直下地震を想定してみよう

)) 地理系カフェ「空想地図」とは? ((

2022年9月にオープンした都内でもめずらしい地理系に特化したブックカフェ。2024年8月現在、1500冊以上の地図・地理等の蔵書がウリです。購入可能な書籍、空想地図、グッズも。お好みのドリンクやお料理と一緒にさまざまな楽しみ方が可能。イベント前の下見、予習も大歓迎です♪

|| 公式サイトhttps://chirikeibookcafe-kuusouchizu.owst.jp/


|| お店からのニュースリリース
https://www.value-press.com/pressrelease/304578

https://www.value-press.com/pressrelease/311184