千葉商科大サービス創造学部の「企業実践知応用Ⅰ」の特別講義として始まったニュースリリース作成実習。第1回の講義で、一通りのレクチャー(詳しくはコラムその1 作成開始までの経緯編 をご覧ください)を受け、ニュースリリースの作成に入ったA~N14班の学生のみなさん。話を聞くとなんとなくできそうな気がするものですが、実際に書こうと思うとなかなかどうして、筆が進まない様子。ここでは作成途上の苦労、やりとり、完成版提出そしてプレゼンテーションまでの道のりを余すところなくお伝えします。
6月5日に実習がスタートし、まず最初のマイルストーンは6月9日の質問期限です。分担を考えたりリサーチを行う中で、初歩的な質問も含め、何でも聞いてください、と設定したものです。
フタを開けてみると、この時点で質問が出たのは I 班、K班のわずか2班のみ。恐らく、みなさんこの時点では「書き出せばなんとかなる」「完成版提出まではあと10日ある」「書かないと質問も出ないし」といった心持ちだったのではないでしょうか?
しかし、出だしの部分でのこの意識の差、実は非常に大きいものになっていきます。一定の質を要求される書類を取りまとめる際、最初の時点で可能な限りの材料を入手し、疑問点を解消しておくことは絶対条件です。たとえるなら、料理を始めて調理が進んでから「アレがない」「ここはどうするんだっけ?」「ああ、仕込みを忘れた」という状況に陥ったら、おいしいものはなかなか作れませんよね。まさにその最初の準備、確認が、このあとの進捗、成果に大きく影響していったのでした。
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さて、それぞれの班からの質問内容ですが、これが非常にレベルの高いもので、驚きました。
I 班は「文章を書く上で文献や資料の引用は可能か」「はじめてニュースリリースを作成する人がやってしまいがちな間違いを教えてほしい」
K班は「記載されている内容や統計データを元に、大学生でも理解しやすい形に自らグラフを作成してよいか」「全体的な構成や情報収集に関するコツや提案がほしい」
という質問でしたが、いずれも実際に方向性の検討をしっかり行い、リサーチもかなり進んでいないとできない質問です。 I 班は謙虚に現状を明らかにした上で、それを打開するための方策を質問しているところに好感が持てますし、K班は目指す方向性、想定ターゲットを明示した上で、それに向かうにあたっての検討点、工夫点を見つけよう、という意欲にあふれている点が秀逸でした。
ここまできちんと考えられていれば、きっと内容のあるニュースリリースができるに違いない、とこの時点で確信に近い気持ちを持ちながら、回答させていただきました。
あっという間に6月14日、ドラフト案(一旦、全ての要素を盛り込み、関係者への回覧、内容確認を行うための文案)の提出期限となりました。既に質問期限の時点で、質問をだせた2班と残り12班の間に大きな差が出ていたのですが、提出期限でさらに各班の認識、思惑の違いが表面化します。
もしこれがお仕事であれば、いわゆる「ホウレンソウ」、報告、連絡、相談が大事になってきます。仕様を満たしていなければ返品になってしまいますし、後ろの工程で待っている人がいるわけですから、期日に無断で遅れてしまうのもNGです。しかし、今はまだ学生の身、そのあたりの認識がないのも致し方ないところ。それぞれのパターンごとに、今後のスケジュールや留意すべき点をお知らせし、指摘点を赤字記入したPDFと、それを解説した文書をお戻ししました。この画像はI班、G班にお戻しした赤字指摘の例です。
班によってはここまでの完成度に至らず、必須要素がなかったり、間違いが多かったりしました。それはそれで、リカバリーすることが可能でしたので、残された少ない時間の中でどこまでブラッシュアップできるか、チャットでやりとりしながら進めてもらいます。
今回、こちらで感じたのは「ドラフト案の完成度、練度が高いと、その分校正、校閲、ファクトチェックの時間をとることができ、ニュースリリースとしての質、価値が上げやすい」ということです。日頃自分でニュースリリースを作る際にも薄々感じてはいたのですが、学生さんたちの案を見て、指摘を出すことでそのことがさらに明確になりました。おかげさまでこちらにとっても意義深い、刺激ある実習になりました。
14班のドラフト案から、大きく3つの傾向が見えてきました。はじめて書くわけですから間違いや仕様を満たさない箇所があるのは当然で、それは指摘すれば直ることですが、気になったのは書き手の視座(物事を見る姿勢や立場)が、ニュースリリース作成者として妥当なものなのか、という点です。
下記の画像は、ドラフト案に対し、こちらからお戻しした指摘(赤字原稿)についての解説文書から、1~3に該当する指摘を抜き出したものです。
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書籍のニュースリリースである以上、その本の内容を限られた資料から掘り下げて理解して、そこに込められた編集者や監修者の思いを掬い上げ、かつ想定読者にとって何がメリットか、という視点での考察と結びつける。難しいことですが、地道に内容を把握し、ファクトを積み上げないとメディアの方に信頼されるニュースリリースは書けないということを、指摘や解説文書でみなさんにお伝えしました。
こちらからお戻しした指摘への対応や校正・校閲を経て、6月19日に全ての班が完成版を提出し、その日の夕方の講義および翌週の講義を使って、各班がニュースリリース案に込めた思い、作成の経緯、今回の経験を通じて感じたこと、などをプレゼンテーションしてきただきました。それぞれについて、昭文社ホールディングスとしての講評も述べさせていただきました。
文案作りだけでも相当大変だったと思いますが、プレゼン資料やそのパフォーマンスまでとても一生懸命取り組んでいる班ばかりで、感動しました。プレゼン資料の中で最も評価の高かったK班のパワーポイントをお見せします。
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いかがですか?「資源」に関する本を自分たち大学生にどう訴求するか、真剣に検討した様子、苦労した点や進捗が手に取るようにわかりますよね。反省点もしっかり記載してあり、短期間にニュースリリースを作りつつ、このパワーポイントまで作成したことは本当に称賛に値すると思います。
3週間にわたる特別講義が終わり、全14班のニュースリリース案が出揃いました。A~N各班の文案と優秀作品3点は、コラムその3 完成版&優秀作品紹介編 コラムにて公開します。学生のみなさんの努力の結晶をぜひご覧ください。