今回、昭文社ホールディングスの広報担当が、山田耕生教授のお声掛けで、企業のお仕事を実体験していただく講義を行いました。
本来、サービス創造学部として、商品開発や企画立案の実践がメインとのことでしたが、ご相談していく中で、創造の基盤となる商品理解を進めるには、一度PRの業務を実践していただくのもいいのでは?というお話となり、6月末に実際に発売される商品について、広報担当と同時並行で学生がニュースリリースを作り、プレゼンをしよう、と決まりました。
今まさにChatGPTに代表される生成AIの発達から「文章作成を自分で行うことって必要なの?」といわれる状況が生まれています。果たして学生のみなさんは、今回の取り組みで何を経験し、どんな知見、感想を得たのか。広報担当としても非常に興味深く得難い経験となった今回の一部始終、どうぞお読みください。
千葉県市川市にある千葉商科大学。この大学は数多くの企業とコラボしたユニークな授業で注目を集めています。昭文社グループも以前より機会をいただき2019年までに何度か特別講義を行いましたが、今回はサービス創造学部の「企業実践知応用Ⅰ」という講義ということで、学生さんにリアルに企業のお仕事を実践していただくことになりました。
【サービス創造学部】―――大学公式サイトの紹介テキストより
今日の社会では、サービス創造人材が求められています。サービス創造学部は、新たなサービスを発想し、実現するために必要な幅広い学問を体系的に学ぶことができる日本で唯一の学部です。
今回のニュースリリース作成実習は、企画・創造の前段階プロセスとして既存の商品を深く理解をするためのアプローチとなります。副次的にはビジネス文書の様式や業務の進め方(スケジュール管理)についても学ぶことができます。昭文社グループとしてもPRの棚卸し、振り返りのよいきっかけとなる今回の取り組み、大変貴重な機会をいただきました。
さて、そもそもニュースリリースとは何か、という点ですが、これはいわゆる「プレスリリース」とほぼ同じ意味で使われる「報道発表資料」のことを指します。企業や組織・団体が、新聞、テレビ、ラジオ、WEBニュース、通信社などのメディア関係者に向けて「自社からのお知らせ(=新規情報)」を発表し報道してもらうことを目的に、一定のフォーマット(仕様、様式)でまとめた公式文書のことになります。
よく「宣伝・販促」と一緒に語られるのですが、ニュースリリースは広告費等を投じてメディアを買う、のではなく、あくまでメディアの方にニュース価値(バリュー)を感じていただき、その方の判断基準により掲載、採用されるものになります。従ってその内容はファクトに基づいた正確な情報であり、客観的に見てニュース性のあるもの、を厳選し伝えることが肝要です。
企業側から見たプロダクトアウトの視点と、顧客から見たマーケットインの視点、その両方を行き来して、最終的に第三者から見て価値ある情報に仕上げることが求められるといえるでしょう。
企業からメディア、あるいは一般のみなさまへの情報発信にはさまざまな手段があります。ニュースリリースのほか、WEBサイト・ブログ等へのコンテンツ公開、SNSによるコミュニケーション、広告・キャンペーンなど販促活動、メルマガ、アンケート施策などもあります。
その中で、ニュースリリースはメディアの方の客観報道を通じて、顧客に情報の価値を知っていただくことを目的としています。ただ発表するだけではなく、その内容がどれだけ報道され、あるいはリツイートなどで拡散されたか、どんな反応があったかを常にウォッチし、効果測定する「広聴」機能と一体となって行われます。ニュースリリースの内容は都度見直され、自社の商品・サービスをさらにニュース価値が高い内容でお知らせしていくことになります。
こうしたことを最初の講義でお話しして、基礎的な知識として頭に入れていただきつつ、いよいよ本題であるニュースリリース作成に向けた作成方法の講義となりました。
ニュースリリースの書き方はその企業、組織・団体によってそれぞれ決まり事があります。従って今回の講義では、昭文社グループのフォーマット(仕様・様式)をお見せして、その説明をさせていただきました。
お渡ししたフォーマット見本は2種類。ひとつは、それぞれの記載要素の文字サイズやフォント(文字デザイン種類)、色などを示した見本(表記レギュレーション)、もうひとつは掲載必須要素、表示順、全体構成などを示した見本(構成レギュレーション)です。
※スマホでは画像をタップすると拡大してご覧いただけます。
生まれて初めて目にするであろうニュースリリースの見本資料、学生のみなさんは大いに戸惑ったことと思いますが、講義中に班分け(4人1組を基本に全部でA~Nまで14班)の上、ディスカッションタイムを持ったところ、鋭い質問がいくつも出て、みなさんの強い意欲を感じました。
さて、今回のニュースリリース作成実習、ひとつ大胆な仕掛けを行いました。模擬的なものを書くのでは緊張感も終わったときの充実感も弱いはず、ということで、昭文社ホールディングス広報担当と同時並行で、実際に6月末に出版される商品『地図でスッと頭に入る世界の資源と争奪戦』のニュースリリースを書く(※)、というお題にしました。
※ 千葉商科大学サービス創造学部より、情報管理を適切に行う旨、お約束をいただき実施いたしました。
この本にした理由はもうひとつ。発売時期がちょうどよかったことはもちろんですが、内容が「資源」に焦点を当てたものということで、大学生にとっても身近に感じやすい話題だったので、今回のお題としました。
※表紙画像をクリック・タップすると商品紹介ページが開きます。
リリース作成に使用する素材も広報担当と全く同じ。お渡しするタイミングも入手したばかりの6月5日、初回講義の日です。表紙画像、誌面画像6見開き、目次5ページ、編集担当が書いた商品紹介文(テキスト)資料を大学のクラウドにアップして、さあ、スタートです。
※スマホでは画像をタップすると拡大してご覧いただけます。
各班概ね4名(一部3名)ということで、分担とスケジュールを設定しました。通常の大学生活を送りながら、2週間でニュースリリースを完成させるというなかなかハードなタスクです。
|| 分担(基本、各班適宜アレンジ可)
◆リサーチ担当・・・ニュースリリースを書くのに必要なキーワードを考え調べたり、執筆担当の求めに応じ正確な情報等を探す役割。
◆執筆担当・・・企画背景や代表誌面、注目記事の解説を書く役割。リサーチ担当に指示を出したり、みんなと相談しニュースリリースのタイトルやキャッチフレーズをとりまとめる役目も。
◆デザイン担当・・・枠、線や見出しの色、フォント(文字デザイン)の選択、テキストや画像のレイアウト、誌面画像の加工(拡大や抜粋など)を担当。
◆校正および記録担当・・・執筆が終わるまでは最終授業で行うプレゼンテーションのための打ち合わせ内容および各担当の行動記録、執筆ができた段階からはその内容の正確さ(ファクト)チェックと記事の校正(誤植探しやレギュレーション違反探し)を行う。
ということで、6月5日からヨーイ・ドン!とニュースリリースの作成に入ったA~Nまでの14班。作成途上にはさまざまな苦労がありました。次のコラムその2 大苦戦?!完成への道のり編 では、各班がどのようにしてニュースリリースを作っていったか、その実態を明らかにします。ぜひお読みください。