MAPPLE×新しいスタイル

~全12作品の特長・込めた思いとプロの目から見た評価、そして優秀作品は?!~

麴町学園女子高の生徒62名が12の班に分かれ、みらい科「製品開発体験学習」で作成した防災地図を一挙公開いたします。作品画像、2月15日に行われたお披露目のプレゼンテーションで発表された内容、昭文社グループからの講評を掲載しています。

後半には地図のプロが評価を行い選定した優秀作品を掲載。ぜひご覧ください。
授業の全貌をご紹介するコラムはコチラから⇒https://www.mapple.co.jp/blog/21456/


1班「ここに逃げ込め!一時避難場所一覧」

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プレゼン内容:麹町地区の特性として、企業・学校等が多く立地し、住民の避難だけでなく通勤・通学者も含めた避難体制が必要、という視点から生まれた地図です。
公的に定められた避難施設以外に、民間の施設で、震災時などに帰宅困難者の受け入れをする用意がある、という情報源を探し出し、それに基づいて地図に示しました。
建物を探す際の目印を記載したり、どんな人が使うのか書いたり、特に重要と思われる注意点は赤字にしたり、といった工夫を凝らしました。

講評:シンプルかつわかりやすいタイトルで、「ここに逃げ込め!」というキャッチも効いています。まずこの地区の特性や課題を認識し、それを解決するための方法を考え、きちんと情報源を見つけ出し、見やすく表現しているところがとてもよいです。

但し書きをつけ、使い方と使用上の注意を喚起しているところもユーザーに親切な作りです。

地図の色使いもハッキリしていて見やすいです。ロゴマークや記号を使ったり、文字をもう少し大きく、メリハリを付けたり箇条書きにしたり、地図上の各建物の番号と、欄外の番号の結び付けを工夫すれば、もっと見やすく、使いやすい地図になるでしょう。

2班「とうめいMAP」

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プレゼン内容:今回は災害マップを作るというテーマだったので地震を想定した透明シート(型地図)を作成しました。最大の特長は、基準(ベース)となる地図に付属品としての透明シートを被せることで、下の地図をシンプルにでき、ゴチャゴチャせずわかりやすい地図にできることです。
地図上の円は(麴町学園女子高からの)100m毎の距離を表しており、さらにシートには色のグラデーションを施していて、避難の際の距離感がわかりやすくなるようにしました。
このアイデアは例えば海に近いところだと津波の危険度を表せます。また様々な状況を表せるので、防災だけでなく、観光スポットや地形を表現した地図にも利用できます。
昼休みや放課後にも集まって地図を作ったので地図作りの大変さを感じましたが、学校周辺のことがよくわかったのでとても勉強になりました。

講評:透明シートを使い、ベースの地図の上に主題(テーマ)を表す円を記載することで、見やすさと使い勝手を両立させるアイデアを考案したところがとてもすばらしいです。距離を視覚的にわかりやすく記載している地図やガイドは実際にありますが、透明シートにすることで下の地図だけを見ることもできるのが秀逸ですね。ハートの飾りがついているところも特徴的です。

他のエリアや用途にも使えることに言及した地図はほかになく、その視野の広さ、発想力は商品企画に非常に大切なことです。

惜しい点としては、タイトルが「とうめいMAP」なので、防災向けの地図であることが伝わりにくいというところ、それから麹町学園女子高以外の地点からの距離がわからないので、他のユーザーにとって有用性があまり高くないところ、が挙げられます。例えばシートが着脱可能で、各円の中心からの距離表示が何カ所も載っている「スケール」型シートだと、自分のいる場所からの距離がすぐにわかります。タイトルやシートの工夫次第で可能性が広がりますね。

3班「Day’s Map」

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プレゼン内容:日にちごとにその地図内で起こる被害想定を記載した地図です。一番下の地図の上に1~3日目に必要な情報の透明なフィルムを1枚、4~5日目に必要な情報のフィルムを1枚重ねました。
1~3日目のフィルムには、地割れや火災など、震災当日起こりそうな想定を書き、4~5日目には、ライフラインについて書きました。右下に凡例を入れ、フィルム上は下の地図が見づらくならないように、マークや色で表すよう工夫しました。
各被害想定は阪神淡路大震災、東日本大震災、関東大震災を参考にまとめました。タイトルは利用する人々の意識が向きやすいようにデザインし、サブタイトルでは目についてわかりやすいように心掛けました。
今まで見たことがなかった「地図」を作ること、見やすく情報もしっかり入っている地図にすること、場所を示すマークやデザインを工夫し誰にとっても見やすくすること、斬新なアイデアを出すこと、各フィルムに何を記載するか決めること、それぞれとても大変でしたが、凄く楽しい体験でした。

講評:被害想定を考え発表する授業の際、それぞれの班が出した想定内容について、地震直後に起こること、しばらく経ってから起こること・問題になること、に区分したのですが、その点に着目し、企画まで繋げた作品です。斬新なアイデアを出すのが大変だった、とプレゼンで話していましたが、最終的に斬新に思えるアイデアも、最初はちょっとした「企画の芽」から生まれていることのよい例ですね。

フィルムを重ねるということはほかの班の何倍も作業量が多くなるのですが、その大変さを乗り越えて、タイトルデザインや使い方、凡例に至るまで、ユーザーの使い勝手を考えながらキッチリと仕上げているのがすばらしいです。

各フィルムをめくって使うことをイラストなどで欄外に記載したりすると、緊急時に慌てている人でも直感的に使い方がわかり、よりこの地図のよさが生きるように思いました。

4班「麹町災害時助太刀マップ」

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プレゼン内容:助太刀マップという名前の由来は「災害時に少しでも手助けをしたい」という思いからこの名前にしました。
今回行った被害想定は3つです。1.坂道や細い道を歩く場合、混雑する可能性がある、2.ガラス張りの建物は窓ガラスが割れる危険、古い建物は倒壊する危険がある、3.地震の影響で停電する可能性がある、です。
これらを踏まえた上で、地図には避難所、病院、太陽光発電、非常用電源、危険なビル、坂・狭い道、という情報を載せました。
また非常用電源の説明や太陽光発電のある施設名も記載しました。
この地図を作成する際の調査方法ですが、現地調査と千代田区や総務省などの資料に基づいています。現地では、ガラス張りの建物が多く、安全基準に適合していない外壁が落ちてきそうな建物があること、たくさんの坂があることがわかりました。
工夫したところとしては、地図に書き込むところ以外は手書きでなくフォント(テキスト)を使ったところです。製品を作るという想定で作業を進めていたので、見やすくするためにそうしました。地図中への書き込みもタックシールを使うなど、わかりやすさを心掛けました。
苦労したところは、いろいろな情報をどのように載せるか、マークにする?色は?説明はどこまで載せる?といった点で悩みました。また地図に慣れておらず、危険な建物の場所を探すのが大変でした。
今回の地図作りで、知らないことがたくさんあることがわかりました。(施設や通りなど)普段使っていても、いざというときに何もわかっていないと感じました。もし地震が起きても、少なくとも坂道や避難所など、今回の調査でわかったことを、今後に活かしたいです。

講評:タイトルや各種説明、凡例のわかりやすさとデザイン性、「手助けしたい」という気持ちを地図としてどう具体化するか悩み抜いた結果としての貴重な情報の数々。こうした考察と制作過程がまさに「製品開発体験学習」の神髄であると思います。

フォントやシールを用いることで、多くの情報をスッキリとまとめていますね。また現地調査としっかりした資料に基づく内容、特に太陽光発電のある施設と非常用電源の解説は他の作品にないもので、震災時に非常に役立つでしょう。

さらに求めるとするなら、実際に太陽光発電や非常用電源をユーザーが活用させてもらうにはどうすればよいか、といったことまで調べられたら凄いと思いました。

プレゼンの際に「知らないことがたくさんあることがわかった」という言葉が印象に残りました。物事は取り組めば取り組むほど、自分の未熟さやその分野の奥深さを感じることになります。この経験はきっと将来生きることでしょう。

5班「麹町セーフティーマップ」

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プレゼン内容:麹町地区は建物が密集しており、避難所が一杯で入れないときに、どの建物が安全か、かつ避難経路として安全なところがどこか、一目でわかるように作った地図です。
あえて調査・掲載範囲を絞り、緊急の際にすぐに避難できるよう建物を厳選しました。2014年以降に建てられたもの、ガラスが落ちてこないもの、落下物が少ないと思われる道、に色をつけて掲載しました。

講評:危険なところではなく、タイトル通り「セーフティー」なところを取り上げたところが着眼点として面白いですね。題字も凝っています。

色分けについてですが、黄色や赤、黒は危険なものを示すサインによく使われます。安全な道を黄色、避難所を赤色、にしているのは目立たせる意図だと思いますが、せっかく緊急時にすぐに安全なところが見つかるように、と情報を絞る工夫をしているので、人間の直感に訴える上では色を変えたほうがよいかもしれません。

6班「最終手段マップ」

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プレゼン内容:タイトルは「印象に残るインパクトのあるもの」にしたい、という意図で付けました。掲載した4項目は、事前に知っておくべきもの、震災時に必要となるもの、という観点で選びました。AEDの場所は建物の中にあるため、現地調査ではわからず苦労しましたが、資料を見つけることができました。
工夫した点として、掲載項目の色やデザインをできるだけ公式のものに近くしたことで、ユーザーにすぐに気づいてもらいやすくしました。凡例もわかりやすさを心掛けました。

講評:なんといってもタイトルの醸し出す切迫感が「防災地図」らしさをよく表せていると思います。商品として並んでいたら12作品の中でも最も引きのあるタイトルかもしれません。

震災時に必要となる要素を丁寧に考え、苦労しながら調べて、それをユーザーにとってわかりやすい色、デザインで適切に地図に表示していると思います。

欲をいえば、地図を使う際、目印になるもの、自分のいる位置を特定する手助けになるもの(たとえば大きな建物の名称や交差点名、通りの名前など)、が記載されていると、AEDや公衆電話をすぐに見つけられるので、より役立つものとなるでしょう。

7班「つながるマップ」

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プレゼン内容:この地図は、大規模災害が発生した際に、ライフラインを確保するためのものです。「ライフライン」とは、電気・ガス・水道等、私たちの生活に欠かすことのできない設備や機能で、災害時に困ったものの調査でも高順位に挙げられていることから、災害時の一分一秒を争う状況でもこの地図で命をつないでほしい、という願いを込めて作りました。
緊急時には余裕がないため、混乱しないよう情報量をあえて減らし、電気や水、情報等が得られる支援ステーションなど本当に必要な内容に絞ったほか、パッと見てわかりやすい、視認性の高いデザイン(アイコンなど)を心掛けました。
よく知らない地図というものを作るのは大変でしたが、様々な地図に触発され、これさえ持っておけば大丈夫、という地図を開発したい、と思うようになりました。地震大国の日本だからこそ、持っている知識や技術を応用した地図を制作することによって「一枚の地図で人の命を救える未来が実現する」のではないかと考えます。

講評:ユーザーが震災時に必要としていることをよく吟味してテーマ、掲載内容を決め、タイトルやデザインにもこだわった、トータルコンセプトを感じる作品です。

タイトルのデザイン、商品のコンセプトを表すイラストや飾り、重要度に応じた文字サイズの設定など、細部に至るまでとても配慮されていると感じました。

情報の信頼性、実際の有用性、いずれも高いと感じました。授業内容を丁寧になぞり、よく調べ、様々な本や地図、参考事例を見て研究したことが垣間見え、多くの情報収集と検討プロセスを経て、そぎ落とした結果が今の作品なのでしょう。実際の地図企画・編集現場と同じようなプロセスで作られた地図だと言えます。

掲載した施設について、どこに行けば何が得られるのか、どう命を守れるのか、具体的な記載があればなお一層よい仕上がりになったように思います。

8班「麹町の避難所・救急MAP」

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プレゼン内容:この地図は緊急時に使用する目的で作りました。特長としては、避難場所、病院、AEDの位置が一目でわかる、というところです。
左の地図には、病院とAEDを記載しましたが、AEDの記号のうち、ハートマークはその場に二つ以上あることを示し、青い丸は一つあることを示しています。この地区の救急指定病院は半蔵門病院だけでした。
右の地図には、避難所などの情報を記載しました。オレンジの道路(国道20号・新宿通り・麹町通り)は、震災時には緊急車両優先道路となり交通規制がかかります。その道路の周辺の建物は耐震性のある建物が多く安全です。

講評:緊急時に必要な情報を2つの地図に分けて見やすく表現しているところがとてもよいと思います。ホテルを載せたり、人混みを見やすく載せていたりするところが特徴的ですね。

AEDの数をマークの書き分けで表しているのはとてもよい工夫です。また病院の電話が繋がりにくいことを但し書きとして記載したり、緊急輸送道路を入れているあたり、実際の取材や調査も丁寧に行っていることがうかがえます。

あえていうと避難先の情報が「学校」「ホテル」となっており、住民、通勤・通学者、旅行者それぞれにとって、利用可能なのかどうかがやや不透明です。災害時の一時待機場所、帰宅支援ステーション、避難所といったいくつかの種類の施設の解説、地図中での書き分けができれば、さらに役立つことでしょう。

9班「大地震発生」

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プレゼン内容:安全な避難経路についての地図を作りました。古いものほど倒壊の危険度が高いと考え、地域の各建物を築年数ごとに色分けし、安全な避難ができるようにしています。
学校周辺を6つの地域に分けて、(分担して)より詳しく調査し情報を記載することで有用な地図にしようと思いました。
6つの地域の状況、特性は地図に記載した通りです。

講評:今回の授業では、時間の制約もあることから、原則、この地図で示されている麴町学園女子高周辺の指定エリア内の調査等を行うことにしていました。企画の中で千代田区全体を扱いたい、という班もあり、最終的には各班の収録範囲に違いが出て、それも各班の工夫の現れとして評価していますが、9班はあえて指定エリアを6つの地域に分けて、徹底的に調査し、建物の築年数に関する非常に詳しい地図を作り上げました。大変貴重で有意義な活動だと思います。

着想の元になった一つとして、テーマパークの案内マップを参考にした、とお聞きしています。デザインは必ずしも独創的なもの、斬新なものがよいわけではなく、よい事例を知ること、論理的、視覚的な合理性を考えた上での設計が商用デザインとして特に重要です。そうした視点に持っているのが本当にすばらしいと感じました。

この作品をさらにブラッシュアップするとすれば、地域分けをどのような理由付けで行ったのか明らかにする。また築年数を調べるのに何を根拠・資料としたか明らかにする。この二点を押さえることで、商品化できるレベルに達すると思います。そんな可能性を感じさせる地図です。

10班「麴町周辺地図」

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プレゼン内容:地震時の建物の安全性を中心テーマに据え、麴町周辺の地図に4つの要素を調べ、掲載しました。1.築50年以上の建物、2.新耐震基準を満たす安全な建物、3.建物の構造が鉄筋コンクリート、あるいは鉄骨鉄筋コンクリートの建物、4.斜面(坂)の場所(=地盤に不安がある箇所や人が集中した際に危険な場所)になります。
危険な可能性があるものは赤、比較的安全と思われるものは青、というように、色で情報内容がある程度わかるように留意しました。

講評:調査、情報収集、そしてその信頼性という点で、他の班にないほどのレベルに達しています。情報参照元もしっかりと掲示し、また説明も見やすくまとめられ、有用性が高い地図です。

班を構成する人数が途中少なくなってしまい、大変苦労したことと思いますが、そうしたことを感じさせないくらい、テーマを練り、掲載する内容を考え調べていることがわかります。パッと見ただけではわからない建物の安全性を見やすく表示することができており、「シンプルイズベスト」のお手本のような地図です。

タイトルのデザインやキャッチーさを追求したり、調査範囲をもう少し拡げられたら、さらに役に立つもの、「商品価値」を感じられるものにできそうです。

11班「最強のソロプレイヤーマップ」

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プレゼン内容:災害が発生したときに情報収集ができる地図を作りました。理由としては、(地震の後)携帯やネットが使えないだろうし、簡単に情報を集めることもできないと思い、少しでも役に立つ地図を作りたいというものです。
地図はニッポン放送の理容防災ネットワークに協力している理容店周辺の地図です。理容防災ネットワークは都内の理容店の協力により、地元の被災状況や道路状況などを伝えてもらうシステムで、都内の約250の理容店が登録されています。この地図の掲載範囲内には4つの理容店がありました。
真ん中に大きく千代田区の地図を配置し、角に4つの理容店周辺の拡大図を掲載しました。(災害時にはラジオが頼りとなることから)東京FMとニッポン放送を地図に入れるため、千代田区全体の地図を入れることにしました。
ほか、公衆電話とAEDも記載しており、公衆電話は時間によって使用できないものと常時使えるものとで色分けしました。
ラジオ局の周波数(AM・FM両方)も記載しました。

講評:被害を想定する際、多くの班が挙げていたのが通信障害でした。日頃携帯やネットを常に利用できることが当たり前の中、情報が入らなくなる恐怖、流言飛語に惑わされたり、群集心理に陥って合理的な判断ができなくなったり、というリスクは、以前にも増して大きな社会問題となっています。

そこに着目し、ラジオ局に取材して「理容防災ネットワーク」を発見し、地図にまで仕上げた企画力と実行力は単なる授業の枠を超え、即ビジネス現場でも使えるレベルです。

また「ソロプレイヤー」という視点もまた現代に即したもので秀逸です。東京のような都市部では地縁血縁に頼ることが難しく、災害時に孤独を感じることが多いはずです。さらにコロナ禍以降、人との距離感も広がる傾向にある中、ラジオを聴くことができ、被害状況等を共有できるこの理容防災ネットワークを知っていることは、何よりの安心材料になります。

商品としての完成度、価値を上げるとすれば、題字のデザインや文字のサイズなど、いくつか改善できそうなところもあります。とはいえ、広域図と詳細拡大図の組み合わせは、プロでもキッチリ作れるまでには経験が要るものです。そこにトライし、成功しているのは本当に凄いことです。

12班「麹町周辺の坂」

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プレゼン内容:麴町周辺の災害時に危険となる「坂」について地図にしました。理由としては10月29日に韓国で起きた群集事故を見て、災害が起きたときも人が集まり、同じような事故が起きてしまうのではないか、と思いこのテーマにしました。
調べてみると麹町周辺は意外に坂が多く、新たな発見ができ、危険な坂を重点的に調べることにしました。この地図を見ればどの坂が危ないか、どの坂に人が集まるかが一目でわかり、災害時に役立てることができると思います。
市ヶ谷駅周辺はお店が多く人が集まりやすいので集団になりやすく危険です。麹町から市ヶ谷に向かう通りは坂は緩やかですが、人や車の交通量が多く、混雑が予想されます。(半蔵門駅のある)永井坂付近の坂はゆるやかですが人通りが多いです。これらの場所は群集事故が起こる可能性があります。
それから地図上の青い線は昔、川だったところで、水が溜まりやすく液状化の起きる可能性がある道です。
この地図では坂の傾斜を色分けで示しています。さらにこの地図では坂以外の情報を減らすことで、大量の情報による混乱を防ぎ、わかりやすくなるようにしました。
この体験を通じて商品を開発することの大変さを自分たちの身に感じましたが、地図のデザインや地図を見ること、人にわかりやすい地図になるよう工夫をする過程はとても楽しくてやりがいを感じました。

講評:秋から授業を進める中で飛び込んできた韓国の群集事故。近年、震災時に起こる可能性が高いとされていることもあり、授業内でも取り上げたところ、それをテーマに据えたのがこの12班の坂の地図です。

「坂」と群集事故を結び付け、丹念な現地調査を通じて作られた地図は独創的ですばらしいものです。傾斜を色分けしたり、昔、川だった道の注意喚起をしたり、欄外にコメントを記号付きで配置することで貴重な情報を見やすく掲載できていると思います。

その坂の傾斜がどちら向きかわかる工夫があれば、もっと生きるように思います。また群集事故を回避しつつ、どこに待機、避難するとよいのか、という点に触れられると、ユーザーにとってさらに有用なものになるでしょう。


 

これら12の地図の中から、製品開発体験学習として優秀な作品を当社グループの編集部が中心となり、選定いたしました。大前提として、どの作品も「防災地図」として必要なクオリティを満たしたすばらしい作品ばかりで、地図のプロが集まる編集部からも驚嘆、感動の声が数多く出ていたことをお伝えしておきます。

その上で、優秀作品の選定にあたっては、下記の観点を重視し、実施いたしました。

  • 防災地図の目的、ユーザーのニーズをよく追求している
  • 現地調査、取材、電話など情報収集を十二分に行っている
  • ニーズや得た情報をよく分析し取捨選択を行っている
  • 地図の見せ方について、見やすさ、わかりやすさ、構成を追求している
  • タイトルや使い方説明、但し書きなど地図欄外の要素にも気を配っている

では、選ばれた作品をご紹介します。

 

タイトル:つながるMAP
~ライフラインと命をつなぐ~

 

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選定理由:タイトルの練られ方、調査・取材の努力、それらを吟味した秀逸な表現・デザイン、そして細部までこだわった完成度。いずれをとっても高い評価を得て、最優秀作品となりました。おめでとうございます!

授業開始当初から一生懸命取り組み、質問も多く、製品開発体験学習を自分たちの糧にしよう、という姿勢がハッキリと出ていました。
途中段階では、災害時に緊急使用が可能な井戸の存在など、綿密な調査を行いつつ、それを表現する段階で情報を厳選し、ユーザーの役に立つ地図に仕上げたところが特に素晴らしいと思います。

当社グループ内のアンケートでも、「デザイン、使い勝手、情報量のバランスの取れた地図」「秀逸なデザイン」「千代田区全体の広域図と麹町の詳細図をうまく使い分けている」「適切な情報量と内容」「災害用伝言ダイヤルを載せているのもGood!」「非常に練られているのでは?」という声が聞かれました。


タイトル:麹町災害時助太刀マップ

 

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選定理由:「助太刀」というネーミングセンス、地図にわかりやすい色使いのシールを用いて見やすく仕上がっているところ、震災時に大きな問題となる電力に注目し、非常用電源や太陽光発電の情報を収集し、その情報の見方もきれいに示しているところ、これらが高く評価されました。おめでとうございます!

現地調査の段階で質の高い調査が行われており、それを地図にするにあたっても、情報の取捨選択を行い、タイトル・地図・凡例など全体的なレイアウトと地図内のデザイン双方に気を配っていて、授業の内容をよく活かしていると思います。

当社グループ内のアンケートでも、「シンプルで見やすい」「シールがスッキリしていていい」「電源等に着目しているのは実用性が高い」「ネーミングがよい」「タイトルのフォントデザインや右下の使用上の注意は、プロレベル、といってもいいくらい」との感想がありました。

 


タイトル:Day’s Map
~被害を予想し安全に行動する~

 

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選定理由:災害が時々刻々と変化していくものであることに着目し、透明なシートを重ねることで時系列に情報を分けて表示し、ユーザーの使い勝手、有用度を高めている点が高く評価されました。タイトルのフォント・大きさ・炎のデザインも非常に特徴的でよいと思います。おめでとうございます!

企画の段階からその独創性は際立っていましたが、各シートをどういう内容にするか、で悩んでいたように思います。その中でよく相談し、東日本大震災などの教訓を元に1~3日目と4~5日目の各透明シート、そしてベースとなる地図、の3種の地図をキッチリ仕上げており、仕上がりも含め、作り込んでいると感じます。

当社グループ内のアンケートでも、「着眼点がとてもよい」「デジタル地図は層(レイヤー)構造になっているが、それと似ているものを紙で実現しているのが凄い」「全体的にデザインにメリハリが効いていてカッコいい」「タイトルと内容が一致している」「使い方がとても丁寧でいい」「ユーザーに長い時間避難することを気づかせる地図」といった感想がありました。


タイトル:最強のソロプレイヤーマップ
~これをみれば 1人でも安心!!~

 

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選定理由:惜しくも優秀作品とはなりませんでしたが、12作品の中で群を抜いた独創性、企画力を評価されており、甲乙つけがたいということで特別賞として選ばせていただきました。おめでとうございます!

企画を検討している段階で「通信障害」に着目。どこに行けば正しい情報が得られるのか考える中で、ラジオが果たす役割に気づき、実際にいろいろなラジオ局に電話取材を行って、「ニッポン放送 理容防災ネットワーク」にたどり着いたところが本当にすばらしいと思います。恥ずかしながら当社の人間も知らなかったこのネットワーク、震災時、この地図に掲載されている理容室に行くと、ニッポン放送の災害報道が聴けるほか、理容室周辺の被害状況、道路状況をニッポン放送さんに伝える拠点の役割を果たします。これらを丹念に調べて、しかも広域図と部分拡大図という見やすい地図に仕上げている点、引き出し線を実に見やすく入れている点など、授業で習ったことをきちんと具現化していると感じました

当社グループ内のアンケートでも、「1人でも安心、というコンセプトがいい」「拡大図と詳細図の組み合わせが上手」「公衆電話やラジオ周波数など、情報が絞られてユーザーが本当に欲しいものになっているのが凄い」「着目点がユニーク!」「ニッポン放送、ほかにも防災の取り組みをいろいろしているようですね。この地図のおかげで知りました」といった声がありました。


 

優秀作品に選ばれた班のみなさん、改めておめでとうございます!この結果は3月16日の1時間目に麴町学園女子高にてご披露いたしましたが、みなさん、健闘を称え合い、それぞれの作品について改めて感想を伝え合っていました。

当社グループは、全作品を保存版プリント化し、特に優秀作品はパネル化して寄贈し、その努力を称える予定です。

作品を見て「自宅周辺や自分の勤め先、学校の周囲の防災地図、作ってみたい」と思った方もおられると思います。ぜひ授業の全貌を明らかにしたコラム「【麹町学園女子高×昭文社】<紙の地図を知らない>高校生が防災地図を作るまで」を参考に、作ってみてください。きっと知らなかったその地域の特性、災害時の弱点、必要な備え、が浮き彫りになるはずです。

関連コラムのまとめページもご用意しましたのでぜひご覧ください。

【麴町学園女子高×昭文社】製品開発体験学習コラム 特設ページhttps://www.mapple.co.jp/blog/21567/