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~社員ひとりひとりにとっての「あのとき、そして今、思うこと」をアンケート結果から紐解きます~

企業人であると同時に生活者でもある私たち。今回、震災10年を契機として、改めて生活者目線から震災の教訓を集めることで、今後より社会に貢献できるような気づきを発見したい。そんな思いでグループ社員へのアンケートを実施しました。

その結果、半月ほどの間に110名の回答が集まりました。その中に津波の被害や、家屋の全半壊、といった直接的な重大被害を被った社員はいません。大多数が東京など首都圏近郊や関西で地震を体験、あるいは報道に接していた人間でした。

このコラムは、震源から比較的離れたエリアで東日本大震災を体験した人間が、当時何を感じ、今、果たしてどれだけ首都直下地震や、南海トラフ地震等想定される巨大災害に対しての備え、心構えを持っているのか、を明らかにします。そしてあれから10年経った今、地震対策として世の中にこういうものがあったら、という社員の提案を、いくつかご紹介したいと思います。

~110名の回答データ概要~

|| 回答した社員が東日本大震災のときいた場所

  • 東京 66名
  • 大阪、千葉 それぞれ10名
  • 神奈川 9名
  • 兵庫 3名
  • 埼玉 2名
  • 北海道、岩手、群馬、愛知、京都、広島、愛媛、福岡、沖縄、海外 それぞれ1名

    回答した社員が東日本大震災のときいた場所

※首都圏にいた人が88名(80%)を占めました。その多くが江東区、中央区、千代田区の拠点あるいは営業や研修などで都内各所にいました。

 


 

|| 東日本大震災で体験した震度

  • 震度6強 4名(4%)
  • 震度6弱 6名(5%)
  • 震度5強 41名(37%)
  • 震度5弱 18名(16%)
  • 震度4以下 13名(12%)
  • 地震を感じなかった 5名(5%)
  • わからない・覚えていない 23名(21%)

    東日本大震災で体験した震度

※本人の記憶によりますので、当時いた場所の正確な震度を表すものではありませんが、それまでほとんど経験したことのない大きな揺れ、と感じた人が多かったようです。

 


 

|| 被災・体験した内容(複数回答)

  • 通常と異なる帰宅を強いられた 69名(63%)
  • 特に被害はなかった 41名(37%)
  • 停電した 13名(12%)
  • 家屋が被災(損壊)した 3名(3%)
  • 断水した 2名(2%)
  • 避難施設に避難した 2名(2%)

    被災・体験した内容(複数回答)

※やはり帰宅が困難だった、という声が非常に多く集まりました。4・5時間から長い人で7・8時間も歩いて帰った、という体験談も相当数ありました。
※その他として「近隣の大規模火災に遭遇した」「家具や家財が損傷した」「自宅周辺の液状化」「出先で帰宅困難になった」といった声がありました。

 


 

|| 現在地震対策として行っていること(複数回答)

  • 水や食料その他の備蓄している 78名(71%)
  • 家具等の転倒を防ぐ施策を行っている 57名(52%)
  • 地域の避難場所や避難計画について把握している 55名(50%)
  • 防災関連のグッズ等を携行している 31名(28%)
  • 伝言板サービスなど家族・友人・知人との連絡方法、待ち合わせ方法を把握している 23名(21%)
  • 震災時帰宅支援マップを持っている 19名(17%)
  • 電気自動車や蓄電池、エコキュートなど停電対策をとっている 13名(12%)
  • 特になし 9名(8%)

    現在地震対策として行っていること(複数回答)

※水や食料の備蓄を行っている人が多い反面、そのほかの対策は多くても半分程度、と震災の風化を感じさせる結果となりました。
※『帰宅支援マップ』(首都圏版)は非常用セットとともに首都圏の社員に配布されているのですが、常時携帯している割合は多くありません。この機会に改めて携行するよう注意喚起します。
※その他として「歩きやすい靴を履くようにしている」「地デジを見られるように古い携帯を持ち歩いている」「住んでいる周辺地域の高低差や地盤の強度、断層の有無、災害の歴史などを調べるようになった」「出先でも被災することを想定している」「近所の地形や道路を把握する・帰宅シミュレーションをしている」「家族防災会議を実施し、被災時にとるべき行動をみんなで確認している」といった具体的な施策も挙がりました。

~フリーワード回答の内容から~

|| 当時の体験を差し支えのない範囲でお聞かせください。

ほとんどの回答者が詳細に当時の体験を記述してくれました。
体験した場所により、感想に大きく違いが出ています。

  1. 建物の上層階・・・揺れが大きく、恐怖を感じたコメントがほとんどです。
  2. 低層階、地下・・・揺れを感じながらも、そのまま業務を続けた人が多く、テレビやネットで状況を知り驚いた、というコメントが目立ちました。
  3. 出張中・外出中・・・状況がよく呑み込めないまま待機や長時間移動を強いられた人が一定数いました。知っている人が周囲にいないことが不安につながった、という声もありました。
  4. 被災地から離れたところにいた・・・阪神・淡路大震災などを経験していた人は、そのときと比較してもより大変な事態になった、と感じた人が多かったようです。テレビやネットから入ってくる情報で、恐怖や不安に駆られた、という声もありました。

地震後の行動について、特に長時間の徒歩帰宅や、駅・臨時開放施設・職場での待機・宿泊を挙げている人が非常に多いです。寒い日ではありましたが、ライフラインがつながっていた分、苦労しながらもさほど混乱なく待機、帰宅できた人が多かったのは幸いでした。

小さな子供がいた人は、幼稚園・保育園から迎えにくるよう連絡があった際、親や知人に徒歩で迎えに行ってもらうなど、対応に苦慮した、との声がいくつもありました。

地震に遭遇した場所と、そのときの境遇、条件等で対処すべきことが全く違ってくるのだ、ということをまざまざと感じました。

 


 

|| 震災の教訓として得たこと、感じたこと、変わったことをお聞かせください。

「日常」が当たり前のものではないと、感じたことを挙げる人がやはり多い印象です。
断捨離をした、家のものを整理した、引っ越しを決意した、など地震を契機としてライフスタイルを変えた人も少なからずいました。
「徐々に記憶が風化した」「恥ずかしながら忘れてしまっている」といった回答もある一方、「今後の地震の際に、停電や断水、倒壊や火災の中で行動する覚悟も持っておかないと」と危機感を持っている方もいます。10年という歳月はそうした温度差を生む時間なのだな、と感じます。

 


 

|| 当社グループとして地震対策のために今後提供できそうな商品・サービス、社会貢献のアイディアがあればぜひご提案ください。

100以上の提案が集まりました。元々地図を生業とする会社ですので、やはり何らかの形で地図に関連する提案が78と一番多くなっています。

  • 特に多かったのは、自治体の発行するハザードマップ(当社で受託しているハザード〔防災〕マップをご紹介しているコラムこちら)の地図デザインや記号などを、見やすくわかりやすい共通仕様にしていく、そしてそれをまとめサイト的な場所を作って掲示し、オフラインでも使えるようダウンロードサービスをする、というものでした。
    電力などライフラインが途絶する、という状況を想定し、紙の地図を備蓄していざというとき供給できるように、という意見もいくつかありました。
  • 旅先、出先での地震に対し、現在の防災施策では情報が行き渡りにくい、ということから、『まっぷる』『ことりっぷ』といった旅行ガイドブックの付録や連携アプリ等に防災情報、ハザードマップを盛り込む、という意見も多く寄せられました。
  • 事前の啓蒙、準備が大切、という観点から、防災ガイドブックとして、昔からの災害記録や過去の土地利用状況、史跡や碑など伝承物を現在の地図に重ね、解説も加えた本やアプリの提案が20以上ありました。
  • ほか、地図を身に着けるものに印刷して防災グッズ化する企画、安否確認や情報配信のためのQRコードシールを交差点や公共施設に設置するといったIoTサービスの提案、行政の持つオープンデータを見やすくわかりやすく公開するWEBページの制作、など、様々なアイディアが出てきました。

当社グループでは、こうした企画提案を全社で共有して、新たな商品・サービス・支援の方策を考えていきたいと思います。

 


 

|| 当社と直接的に関係ないもので結構ですので、今後予想される地震に対して、行うべきこと、あってほしいもの、などありましたらぜひご提案ください。

自社他社を問わず、こんなものがあったら地震対策としてよい、という商品やサービスについて問いかけました。

  • ライフラインの途絶を想定したサービスの要望が多くなりました。衛星通信、簡易の発電機、災害時でも位置情報を共有できる通信機器、ダウンしにくいサーバー(情報の発信のための)、充電可能な施設等が閲覧できるオフラインマップなどです。
  • 避難所の混雑状況や備蓄、地域のコミュニティと繋がる手法など、避難時の安心サービスも多く挙がっています。
  • 防災グッズ・備蓄商品を定期的に更新するためのサブスクリプション、という声もありました。
  • 少数意見ですが、ペットの避難に関する情報が受信できるサービスや、手持ちの材料で生き延びるためのマニュアル、状況を説明すると対処法を教えてくれるAIサービスなど、実際に被災したら大切だなあ、と思う要望・提案がありました。

既に存在するものが多いかもしれませんが、その場合でもまだ普及・浸透していないということもありますので、いろいろな業種の方々と協力して、役立つ商品・サービスを普及させられたら、と思いました。

今回、社員アンケートをしてみて、当時まだ中学生だった社員もいたことを知り、改めて10年の歳月を感じました。
対策をとっている社員が多い一方、帰宅困難に対する対策は、十分とは言えない数字が出てしまいました。
『帰宅支援マップ』を刊行している企業として、改めて対策を肝に銘じます。
今回のアンケート結果が、みなさまの地震・災害対策の参考になれば幸いです。

関連コラムも公開しています。ぜひお読みください。

東日本大震災から10年 『あのとき、そして今、思うこと。』 特設ページ
https://www.mapple.co.jp/blog/13323/