企業人であると同時に生活者でもある私たち。今回、震災10年を契機として、改めて生活者目線から震災の教訓を集めることで、今後より社会に貢献できるような気づきを発見したい。そんな思いでグループ社員へのアンケートを実施しました。
その結果、半月ほどの間に110名の回答が集まりました。その中に津波の被害や、家屋の全半壊、といった直接的な重大被害を被った社員はいません。大多数が東京など首都圏近郊や関西で地震を体験、あるいは報道に接していた人間でした。
このコラムは、震源から比較的離れたエリアで東日本大震災を体験した人間が、当時何を感じ、今、果たしてどれだけ首都直下地震や、南海トラフ地震等想定される巨大災害に対しての備え、心構えを持っているのか、を明らかにします。そしてあれから10年経った今、地震対策として世の中にこういうものがあったら、という社員の提案を、いくつかご紹介したいと思います。
|| 回答した社員が東日本大震災のときいた場所
※首都圏にいた人が88名(80%)を占めました。その多くが江東区、中央区、千代田区の拠点あるいは営業や研修などで都内各所にいました。
|| 東日本大震災で体験した震度
※本人の記憶によりますので、当時いた場所の正確な震度を表すものではありませんが、それまでほとんど経験したことのない大きな揺れ、と感じた人が多かったようです。
|| 被災・体験した内容(複数回答)
※やはり帰宅が困難だった、という声が非常に多く集まりました。4・5時間から長い人で7・8時間も歩いて帰った、という体験談も相当数ありました。
※その他として「近隣の大規模火災に遭遇した」「家具や家財が損傷した」「自宅周辺の液状化」「出先で帰宅困難になった」といった声がありました。
|| 現在地震対策として行っていること(複数回答)
※水や食料の備蓄を行っている人が多い反面、そのほかの対策は多くても半分程度、と震災の風化を感じさせる結果となりました。
※『帰宅支援マップ』(首都圏版)は非常用セットとともに首都圏の社員に配布されているのですが、常時携帯している割合は多くありません。この機会に改めて携行するよう注意喚起します。
※その他として「歩きやすい靴を履くようにしている」「地デジを見られるように古い携帯を持ち歩いている」「住んでいる周辺地域の高低差や地盤の強度、断層の有無、災害の歴史などを調べるようになった」「出先でも被災することを想定している」「近所の地形や道路を把握する・帰宅シミュレーションをしている」「家族防災会議を実施し、被災時にとるべき行動をみんなで確認している」といった具体的な施策も挙がりました。
|| 当時の体験を差し支えのない範囲でお聞かせください。
ほとんどの回答者が詳細に当時の体験を記述してくれました。
体験した場所により、感想に大きく違いが出ています。
地震後の行動について、特に長時間の徒歩帰宅や、駅・臨時開放施設・職場での待機・宿泊を挙げている人が非常に多いです。寒い日ではありましたが、ライフラインがつながっていた分、苦労しながらもさほど混乱なく待機、帰宅できた人が多かったのは幸いでした。
小さな子供がいた人は、幼稚園・保育園から迎えにくるよう連絡があった際、親や知人に徒歩で迎えに行ってもらうなど、対応に苦慮した、との声がいくつもありました。
地震に遭遇した場所と、そのときの境遇、条件等で対処すべきことが全く違ってくるのだ、ということをまざまざと感じました。
|| 震災の教訓として得たこと、感じたこと、変わったことをお聞かせください。
「日常」が当たり前のものではないと、感じたことを挙げる人がやはり多い印象です。
断捨離をした、家のものを整理した、引っ越しを決意した、など地震を契機としてライフスタイルを変えた人も少なからずいました。
「徐々に記憶が風化した」「恥ずかしながら忘れてしまっている」といった回答もある一方、「今後の地震の際に、停電や断水、倒壊や火災の中で行動する覚悟も持っておかないと」と危機感を持っている方もいます。10年という歳月はそうした温度差を生む時間なのだな、と感じます。
|| 当社グループとして地震対策のために今後提供できそうな商品・サービス、社会貢献のアイディアがあればぜひご提案ください。
100以上の提案が集まりました。元々地図を生業とする会社ですので、やはり何らかの形で地図に関連する提案が78と一番多くなっています。
当社グループでは、こうした企画提案を全社で共有して、新たな商品・サービス・支援の方策を考えていきたいと思います。
|| 当社と直接的に関係ないもので結構ですので、今後予想される地震に対して、行うべきこと、あってほしいもの、などありましたらぜひご提案ください。
自社他社を問わず、こんなものがあったら地震対策としてよい、という商品やサービスについて問いかけました。
既に存在するものが多いかもしれませんが、その場合でもまだ普及・浸透していないということもありますので、いろいろな業種の方々と協力して、役立つ商品・サービスを普及させられたら、と思いました。
今回、社員アンケートをしてみて、当時まだ中学生だった社員もいたことを知り、改めて10年の歳月を感じました。
対策をとっている社員が多い一方、帰宅困難に対する対策は、十分とは言えない数字が出てしまいました。
『帰宅支援マップ』を刊行している企業として、改めて対策を肝に銘じます。
今回のアンケート結果が、みなさまの地震・災害対策の参考になれば幸いです。
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東日本大震災から10年 『あのとき、そして今、思うこと。』 特設ページ
⇒https://www.mapple.co.jp/blog/13323/