都道府県の形を表す段彩図に「〇〇(※)のトリセツ」とパッと目を引くタイトル文字。そういう表紙の本を一度は本屋さんの店頭で見かけたことがあるのではないでしょうか?2019年9月に初お目見えの『神奈川のトリセツ』から、2022年1月の『高知のトリセツ』まで、足掛け4年で全国47都道府県をコンプリートした、昭文社より出版の「トリセツ」シリーズ。地方紙の新刊紹介ページや本屋さんの郷土本コーナーなどで大きく取り上げていただき、各県の売れ筋ランキングにもたびたび登場しました。(※〇〇には都道府県名が入ります、以下同)
少しずつエリアを広げていく中、「地元ですが知りませんでした」「住んでいる地域のことをもっと知りたくなりました」など反響をたくさんいただきつつ、「トリセツ」シリーズそのものに対しての質問も数多く届きました。今回は47都道府県コンプリートを機に、メディアや都道府県の方々から寄せられた代表的な質問をまとめ、「トリセツ」に関わった編集部、取材スタッフ、監修者の方々および広報担当にて回答してみました。
各都道府県を一冊丸ごと取り上げ、今昔の地図を読み解きながら、地形や地質、交通、歴史、文化と産業など、共通の構成を用いて4章立てでその地域の特徴や魅力を紹介する、マップエンターテイメント本。地域内に存在している「初耳秘話」をクローズアップし、知っているようで知られていないローカル色強めのトリビアやウンチクを40ほど厳選してまとめています。
地図やガイドブックで定評のある昭文社らしい、見やすくてまとまった誌面に面白い切り口、マニアも納得の深掘りぶりが人気となった当シリーズの詳しい内容を、当サイトのコラムコーナー記事「『トリセツ』シリーズのトリセツ!?知っているようで知らない都道府県トリビア」にて公開しています。何冊かのトリセツを読み比べて気付いたことを、読者視点でまとめた内容となります。ぜひチェックしてみてください。
編集部:昭文社といえばやはり「地図」。地図・ガイドの分野においては本家本元の自負があります。ブラタモリなど地理・地形のトリビア企画・本がブームとなる中、今まで蓄積してきたノウハウを活かし「地図で各地域を深掘りしてみたら面白い発見があるのでは?」という発想から『〇〇のトリセツ』がスタートしました。最初は全都道府県出版する予定はなかったものの、出版した県の方・ご関係の方から次々と想像以上の反響が寄せられていたことは大変励みとなりました。
編集部:答えは「Yes」です!とっても身近で大好きだけど、接し方がわからない、という存在にトリセツがあったら、と思う気持ちは、あの曲とこの本、実は共通しているところがあると思っています。
「トリセツ」シリーズ、当初のタイトル案は実は『〇〇県の初耳』でした。しかし社内で検討した際に「それなら100%初出と言い切れなければNGになる」という厳しい意見を受け、30ほどのタイトル案から実際に本を売って歩く営業担当の投票で、今の「トリセツ」に決定しました。書名に「初耳」をつけることは却下されましたが、「初耳かそれに近い内容を」という意気込みは変わりがありませんでした。
編集部:まずはある程度人口の大きな都道府県で反響を見てみよう、ということでした。東京や大阪、京都などは取り上げる本が多かったこともあり、神奈川県を選んでみました。それから2020年に入り、コロナ禍で思い通りのおでかけが難しい状況から、現地に行けなくても「読むだけで楽しい、ためになる本」を得意な地図を活かして作るという想いの下、トリセツを本格的に全県を目指してシリーズ化させることに踏み切りました。シリーズ化決定後、出版ペースもアップしました。編集チームを拡大して、月に2、3冊同時に読者のお手元にお届けするように努めました。
編集部:その地域ならではの見どころが1冊1冊で異なって、一言ではなかなか言えませんが、共通の構成を用いている「トリセツ」シリーズは47冊全部「絶景グラビア」から始まり、核となる第1章「地図で読み解く〇〇の大地」は、じわじわと新たなファン層が増えつつある地形・地質に関する内容で固めています。第2章「〇〇を駆ける充実の鉄道網/交通網」は、鉄道好きにたまらない鉄道・交通の話に持っていき、中盤の第3章は「〇〇で動いた歴史の瞬間」を経て、最後は第4章「〇〇で生まれた産業や文化」で締めています。
編集部:全部!と言いたいところですが、あえて挙げるとすると、1920~30年代に活躍した絵師・吉田初三郎の鳥瞰図など、こだわりの古地図を入れているところ、がまず一つ。それから「地形・地質」と「鉄道・交通」の内容を豊富に取り入れたところは昭文社の「トリセツ」シリーズならではの工夫。また編集担当の中で「歴史」と「文化・産業」推しの者も少なからずいます。「あの人気漫画のキャラクターは、元々歴史ヒーローだったんだ!知ってビックリ」「面白いネタが多すぎて選ぶのが大変だった」という具合に、編集者自身も情報に手応えを感じながらの制作でしたから、大変読み応えのある仕上がりになっています。
編集部:内容の新鮮さを求める一方、地形・地質、鉄道・交通、歴史、産業・文化、4つの分野において全て「まんべんなく、かつ、よくぞ、そこを取り上げた」という絶妙なバランスを取ることも、心かげていました。「トリセツ」シリーズはエリアによって、編集担当・執筆者・監修者が異なり、取材対象も大学の先生から専門ガイド、学芸員まで多方面の方々に協力していただいています。情報が多岐に渡り、且つ玉石混淆で、思い込みや都市伝説的なものも多かったです。関係者が持ち寄ったとっておきのネタから厳選して、綿密な打合せの下に取材を敢行し、さらに数え切れない確認作業を行った上、やっと記事ができ上がります。
編集部:「トリセツ」編集チームがもう一つ大切にしていたのは、採用地域を偏在させず、その県内の地名・一個一個の「まち」をなるべく多く取り上げることです。これは、1990年代創刊の「まっぷるマガジン」(当時は県別情報版)シリーズでも行っていました。「県民愛の上に、さらに市区町村ごとの地元愛・プライドがある。そのことを限られた誌面でも触れたい」という編集制作一同からのメッセージをぜひ、ページを捲って感じていただきたいのです。
取材スタッフ:「ふるさと愛は、ふるさとを知ることから」という言葉があります。その地に生まれ育った人たちは目の前にあることを「当たり前」と、あまり気にも留めません。名所や旧跡などを「当たり前」のように説明してもおもしろくないので、視点を変えたり、周辺を探ったりしながら工夫しました。楽しくもあり、大変でもありました。
監修者:「初耳」探しは大変で、大昔にボツになってみんな忘れている都市構想を掘り返すようスタッフに進言したりしましたね。「あ~、そんな(無茶な)案、あったんですね~」とのリアクションが(笑)
取材スタッフ:その都道府県に縁もゆかりもないスタッフと話をして、本当に初耳かチェックする作業なんかも大変でした。
取材スタッフ:失われた地形に関する資料が見つからなかったり、インターネット上に存在している昔の写真の持ち主がわからず使えなかったりすることは、しょっちゅうありました。古地図や鳥瞰図などは個人的な興味もあり実物を入手したのですが、100年近く前のものだと肝心な部分が汚れていたり、破れていたりして使えないケースが多々ありました。掲載できなかった秘蔵地図をたくさん持っているのですが、どうしたものかと(笑)
取材スタッフ:そもそも現地の空気を味わえないのが、残念でした。実際に現場がどうなっているのか確認できず、話題を変更せざるを得ないこともありました。また、資料館・観光協会・お店などが休業となってしまい、急に連絡がとれなくなってしまうケースが、かなり多かったです。現地にいるのに「取材ができません」ということも、多々ありました。
編集部:取材陣が最初に聞いていた話が都市伝説だった、というケースは実は本当に多いです。それをこの本で確かめていただける、というのもアピールポイントの一つです。また「諸説あり」のネタに関しては、調べがつく限りの内容で、監修の方のご意見も踏まえて掲載しています。この本をきっかけに、ご自身で調べて、もし新事実がわかったらとてもうれしいです。その際は当社のお問い合わせ窓口からぜひお寄せください。
編集部:県外から訪ねる方々に情報を提供する一般的なガイドブックとは真逆、「トリセツ」シリーズはズバリ「地元の方」向けです。コロナ禍で行動範囲が限られる中、自分が暮らしているまちや地域に目を向ける機会も増えています。「マイクロツーリズム」が叫ばれる中、住んでいる市町村そして都道府県のことが気になりながらも、どのようにして調べていいのかわからないという方が少なからずいるはずです。「あの山々や谷、河川や岩石などはどのようにしてできたものか?」「この遊歩道はもしかして元線路だった?」「地元の名産物といえば〇〇ですが、そもそもなぜ有名に?」など、疑問が浮かんだ際にぜひその県の「トリセツ」をお手に取っていただければと思います。
広報:これは実際に営業職の方に言われたことなのですが「はじめて営業に行くエリアで、トークのネタに使ったら『よく知ってるねえ』と褒められて、見事に契約に漕ぎつけました!」とのことです。とても仲良くなって「他にここにも行くといいよ」と教えてもらえたそうで「トリセツ様々です、毎回買ってます」これはこちらまでうれしくなりました。あとはラジオパーソナリティの方から「毎週の挨拶ネタに使ってます」と言っていただいたりもしています。
広報:全体的に非常に好調で、各地元でとても評判が良いです。SNSでは「地元ですが知らなかった」「地図を片手に近所を巡ってみたくなる」など声がどんどん増えていき、各県の新聞やラジオ局でも多数取り上げていただきました。おかげさまで増刷をしたものも数多くあります。発売半月ですぐに増刷が決定した『東京のトリセツ』は、ご好評にお応えして、2022年1月末に続編の『東京のトリセツ2』も出版することになりました。『東京のトリセツ』とはまた別角度の視点で、掘り下げた「懐かしき」東京のトリビアをふんだんに盛り込んでいます。ぜひ2冊併せてお楽しみください。
広報:お近くの本屋さんを覗いてみてください。きっと地元の主要な書店さんではその県の「トリセツ」が目立つところに展示してあるはずです。また主なネット書店にてももちろん入手可能です、詳しくは昭文社サイト「トリセツシリーズ紹介ページ」よりご確認いただけます。
また「トリセツ」の掲載内容を確認したい方は、「トリセツ」シリーズ発売ニュースリリース全47冊のまとめページをご覧ください。自分の暮らしている地域以外の「トリセツ」はどんな内容を掲載しているのか、となりの県の「トリセツ」見どころとは、など、比較する読み物としてもお楽しみいただけます。
編集部:さきほどご紹介した『東京のトリセツ2』を皮切りに、今もトリセツシリーズの新たな切り口、視点を模索しています。みなさまのお声も参考にしながら、また新たな本を出していきたいと思いますので、ご期待ください!