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50年以上にわたって登山者に愛されてきた『山と高原地図』の昭文社が満を持して刊行する『日本百名山トレッキングコースガイド』上下巻より、登山「中級者」を目指す人たちにオススメの山をご紹介!出版を記念して、「日本百名山ひと筆書き」プロジェクトを2014年10月26日に達成された田中陽希さんに、ご自身の登頂経験を踏まえたメッセージをいただきました。

プロフィール
田中陽希(たなか ようき)
1983年生まれ。富良野の大自然での生活に憧れた父の一言によって、家族で北海道富良野市に移住。一年の大部分を雪と共に過ごす内にクロスカントリースキーに没頭する。明治大学に進学後もスキー部で活動し、インターカレッジで7位入賞。大学卒業後、体育教員を目指す傍らアドベンチャーレースと出会い、冒険へと人生の方向転換を図る。現在、群馬県みなかみ町に拠点を置き、国内唯一のプロアドベンチャーレースチームであるTeam EASTWINDの主力メンバーとして活躍中。 2014年、南は屋久島、北は利尻島までの日本百名山を人力のみで走破する「日本百名山ひと筆書き」7800kmの旅を208日と11時間で達成。

●チャレンジの全貌はコチラから

http://www.greattraverse.com/

そして2015年3月、「深田クラブ」によって1984年に選定された二百名山のうち、2014年に未踏だった100山をひと筆書きで踏破する「日本二百名山ひと筆書き」プロジェクトに挑戦することを発表。総走破距離7500km超、宗谷岬をスタートし、佐多岬をゴールとする前人未到のプロジェクトに挑む。

●チャレンジの概要はコチラから
http://bit.ly/1azZO4t

2010年ごろからの山ブームを牽引してきた、新たな世代の登山愛好者たち。「山ガール」「登山女子」…そんな言葉が広まってからはや5年。女性に限らず若い世代の中では、ブーム当初から登山に魅了され、着実に登山経験を積んで、山岳「初級者」から「中級者」になろうとしている人たちが着実に増えています。
今、そんな人たちの中で大注目されているのが「日本百名山」。昨年、アドベンチャーレーサー田中陽希さんによる人力での百名山踏破チャレンジ「百名山ひと筆書き」がテレビで放映されたこともあり、その知名度と人気はますます上昇中!
文筆家で登山家でもあった著者、深田久弥が選定した100山は、多くの登山家にとっていつか踏破したい憧れの山。しかし、選ばれた100山は標高も難易度もさまざま。「チャレンジしてみたいけど、自分のレベルはどれくらいだろう…」「最初に登るなら、どの山を選ぼうかな?」と悩んでいる人も多いはず。
今回は、そんな「日本百名山」を、昭文社が50年以上の歴史を持つ『山と高原地図』で培ったノウハウで徹底的にご紹介する、その名も『日本百名山トレッキングコースガイド』上下巻から、「初級者」から卒業して、「中級者」になりたい!という人たちへぜひオススメしたい山をピックアップしました!
 

百名山と銘打たれているからには、と、100山踏破を目指す人は少なくありません。しかし、百名山のコースのレベルはさまざま。季節や天候によっても難易度は変わります。まずはしっかりと事前調査をして、自身の経験や体力に応じた山を選ぶことが大切です。今回は特にオススメの7山をセレクトしてご紹介。
「初級者から一歩先に進みたい」「もう少し難易度が高い山にチャレンジしたい」「適度なレベルの山で経験を積みたい」という方に、ぜひ参考にしていただきたい山ばかりです!

日本最北の孤島の山、利尻山。海に浮かぶ円錐形のシルエットが美しいこの山は、往復約12kmの急坂ロングコース。7〜8月には高山植物が咲き乱れる利尻礼文サロベツ国立公園内の山域は特別区域に指定され、リシリリンドウ、リシリゲンゲなど「リシリ」と名のつく植物も数多く生息。日本百名山だけでなく、花の百名山、新・花の百名山にも選定されています。

 

百名山チャレンジでの登山時期は、7月8月のハイシーズンではなく10月末。冬型の気圧配置の影響で、当時、利尻岳は強風と分厚い雲に覆われていました。この時は、自然の一瞬の息継ぎの間に登ることができましたが、気候のタイミングを見計らうことのむずかしさを体感しました。 しかし、海抜0mから山頂まで駆け上る景色の変化は別格!北の最果てで見る山頂からの「360度海」の展望は地球の丸さを実感できることでしょう。
 

[山頂にある神社にて。]

9合目から先は足を取られやすい路面です。右側が切れ落ちているので強風時には特に注意を!また、海からの風や気温の変化で天候がめまぐるしく変わる場合も。初めて登る人は特に、地元の山岳会などでも情報収集してくださいね。 

山形県と新潟県境上に連なる朝日連峰は東北屈指の山岳エリア。そのなかでも盟主となる大朝日岳はその雄大な山岳景観が魅力。2000mに満たない山ながら、日本アルプスに劣らない豊かな高山植物群と大規模な雪食地形を見ることができます。南北に細長い大朝日山頂の壮観な眺めは圧巻です。

 

僕のチャレンジの際は、本に掲載のルートとはかなり違ったルートで、同一ルートは山頂から小朝日岳までの稜線区間のみです。この時は東北に入ってから初めての、秋の到来を感じる日でした。2日前まではうだるような暑さだったのが、この時は、身震いするほどの寒さ。山の春から秋までは本当に早く過ぎ去っていくことを知りました。
 

[大朝日岳直下にある大朝日小屋からの眺めも最高。(右:ガイドブック上巻P73より)]

まるで人の手の届かない場所へ迷い込んでいくような、不思議な気分を感じさせる朝日岳までの道のり。歩を進めるたび感じる山深さは、大きく手を広げたようです。山を一気に吹き上げるひんやりとした風は、真夏でも秋の匂いを感じさせてくれるでしょう。 東北の山は有人小屋でも避難小屋なので、利用の際は事前の確認を忘れないように!  

山梨県北杜市に位置する瑞牆山は、山頂に向かって花崗岩の岩峰が立ち並ぶ独特の山容が特徴です。登山道はみずみずしく豊かな森から見上げるような巨岩群を経て、沢を渡り滝へと続く変化に富んだ風景で、登山者を飽きさせることがありません。春のシャクナゲや秋の紅葉も素晴らしく、写真スポットも多彩です。

 

僕が登山した時は金峰山~甲武信ヶ岳へと縦走をしていましたので、ガイドブックのコースとは逆に、林道終点〜天鳥川へと進んだ感じになります。同じルートを通っていても、登山の順序が逆なだけで、山への印象は全く違うものになるのではないでしょうか。断崖絶壁の山頂では、左に五丈石がシンボルの金峰山、右に八ヶ岳連峰、正面に南アルプスと富士山という大パノラマ。本当に、何度来ても素晴らしい眺めです。
 

[ルートは違っても、登頂の喜びは同じ!道中にはこんな巨岩も。(右:ガイドブック上巻P200より)]

道中、見上げるような岩を注意深く眺めると、壁面にいくつものボルトが打ち込まれているのに気づくことができるでしょう。登山者だけでなくロッククライマーも魅了する、瑞牆山ならではの光景です。クライマーたちの作るルートには「こんなところも登っちゃうのか!」と驚いてしまいます。 

これぞ日本アルプス!といった風情、その存在感に訪れたものを圧倒する穂高連峰。日本第3位の高峰である奥穂高岳を中心に、前穂高岳、北穂高岳、涸沢岳などからなる連峰は上高地、新穂高温泉、槍ヶ岳方面など複数の入山ルートがあり、登山者のレベルに合わせて選ぶことができます。

 

本の掲載ルートとほぼ同じ、横尾山荘を起点に登りました。涸沢を経由してコルまで登り、山頂へ。北アルプスの14山の中で1、2を争う晴天と無風の世界が広がっていました。真っ青な空、光り輝く残雪、黒々と光る岩肌、誰もが言葉を失う世界がここには広がっています。穂高岳の魅力はなんといっても「涸沢カール」。これを見るだけで満足!という気持ちは登ってみて初めて理解できました。
 

[登頂は6月15日。山頂の祠には氷が残り、青空とのコントラストが眩しい。]

眺めるだけでも十分に魅力を感じられる「涸沢カール」。登る際は、見えてくる槍ヶ岳や常念岳、笠ヶ岳など日本アルプスの山々との対面も楽しんでください。また、大自然の輝きに触れた後は、しっかりと集中し直して下山に備えましょう。 

南アルプスの南北に向かい合う甲斐駒ヶ岳と仙丈ヶ岳。北沢峠を起点とした1泊2日で両山を一度に楽しむコースをとる方も多いようです。甲斐駒ヶ岳は白い花崗岩からなり、白く輝く岩肌が男性的で勇猛な雰囲気をまとっています。山道はゴーロの斜面に樹林帯、やせ尾根、岩場にザレ場とバラエティに富んだコースが続きます。

 

南アルプス林道の峠、北沢峠から、仙水峠~駒津峰~山頂~駒津峰まではガイドブックと同じですが、僕は仙水小屋を経由して駒津峰から頂上へアタックしました。当時は梅雨時期だったため、3000m近い標高でも分厚い雲の中に包まれていました。花崗岩でできたピラミッド型の山頂では、幾年もかけて侵食された山肌にところどころ天然の階段ができていたのが印象に残っています。
 

[分厚い雲に覆われた山頂。仙水小屋には可能なら寄りたいところです。(右:ガイドブック下巻P105より)]

ガイドブックの山小屋ナビにも載っている「仙水小屋」は南アルプスでは珍しい通年小屋。小屋のご主人の試行錯誤が随所にみられ、南アルプスの歴史などにも触れることができます。ご主人の体験談は必聴です!予約制ですが、甲斐駒ヶ岳へ登る際は仙水小屋で一泊するのもいいですね! 

紀伊半島を貫く神々の山稜、大峰山脈。幾重にも折り重なる美しい山並みを辿り、奈良県の吉野から和歌山県の熊野を結ぶ縦走路は奥駆道と呼ばれています。1300年の歴史を持つ山岳古道で、2004年には世界遺産に登録されました。美しいブナの森からは近畿地方最高峰の八経ヶ岳が顔を覗かせます。

 

奥駆道出合から八経ヶ岳まではガイドブックと同じルートを通りましたが、僕は天川村から登りましたので、逆走のルートになりますね。 時期は梅雨入り前。初夏の花などはほとんどありませんでしたが、新緑がきれいな時期でした。最高峰八経ヶ岳から見下ろす山塊は見事の一言です。
 

[新緑の美しい山頂で。標高によって移り変わる自然を楽しもう。(右:ガイドブック下巻P148より)]

歩を進めるにつれ、植林によって作られた杉や松林からブナ林へと、徐々に木の背丈が低くなり、トウヒやシラベの原生林へと変化していく様子がわかるはず。距離は長いですがゆっくりと標高を上げていくので、山の変化を楽しんでほしい道のりです。  

世界自然遺産の屋久島中央に位置し、九州随一の高さを誇る宮之浦岳。ダイナミックな山岳風景から森へと入って行く山道では屋久杉をはじめとした固有種や急峻な地形による特異な生態系など、貴重な自然が数多く残されています。まさに「洋上のアルプス」とも言うべき宮之浦岳の山頂からは、碧紺の海と、永田岳を望むことができます。

 

チャレンジの際は、淀川登山口から荒川登山口まで、ガイドブックとほぼ同じルートをとりました。通常は1泊2日の行程ですが、僕は一日で駆け抜けました。異世界に迷い込んだ気持ちになれる山は、百名山の中ではこの山が一番かもしれません。
 

[雨の多い屋久島。雨に降られなければ、かなりラッキー!?]

登山道の脇は、まるでジャングルクルーズのように手つかずの自然がむき出しになっています。苔むした山肌やその中を抜けるトロッコ道は違う時代へと迷い込んだよう。雨が多いことでも知られる屋久島。雨に打たれることなくこの山塊から抜けることができたら、かなりの幸運です! 

   

[『日本百名山トレッキングコースガイド』上巻(左)下巻(右)]
 
この3月、昭文社は「日本百名山」をテーマとした登山ガイド上下2巻を発売しました。
上記コラムでも取り上げましたように、深田久弥氏選定の「日本百名山」は、テレビシリーズの影響等もあり以前から登山者のあこがれとして注目を集めてきました。
「日本百名山」の出版から50年を経てなお、ますます人気が高まっている「日本百名山」を、これも50年以上の歴史を持つ『山と高原地図』で培ったノウハウで徹底的にご紹介する本が『日本百名山トレッキングコースガイド』上下巻です。
上巻では北海道、東北、上信越、北関東、秩父・南関東の53山、下巻では北アルプス、八ヶ岳、中央アルプス、南アルプス、近畿・北陸、中国・四国、九州の47山をご紹介。
一山は写真&基本データと地図&プランニングデータの2見開きで構成。写真、ピクト、色彩などにこだわったビジュアル要素満載の誌面ですので、中級者の方にも楽しく、わかりやすく情報を把握していただけます。特にコース地図は『山と高原地図』シリーズをベースにした定評のあるコースタイムや危険箇所など登山に必須の情報に加え、注目ポイントには写真を配置。よりリアルに現地の情景を浮かべながらプランニングをしていただけるよう工夫を凝らしました。
北海道、東北といった各エリアの末尾には「おすすめ立ち寄りスポット」コーナーを設け、見る・遊ぶ、買う、グルメのジャンルごとにスポットを掲載。下山後のお楽しみもしっかりサポートしています。

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