MAPPLE×新しいスタイル

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2014年4月1日からスタートした、人力のみで日本百名山をひと筆書きでつなぐ「日本百名山ひと筆書き」プロジェクト(総距離7800km!)を10月26日に達成された田中陽希さんに、地図の活用法、プロジェクト中の楽しみ、そしてこれからなにかにチャレンジしたいと思っている人へのメッセージを頂きました。

プロフィール
田中陽希(たなか ようき)
1983年生まれ。富良野の大自然での生活に憧れた父の一言によって、家族で北海道富良野市に移住。一年の大部分を雪と共に過ごす内にクロスカントリースキーに没頭する。明治大学に進学後もスキー部で活動し、インターカレッジで7位入賞。大学卒業後、体育教員を目指す傍らアドベンチャーレースと出会い、冒険へと人生の方向転換を図る。現在、群馬県みなかみ町に拠点を置き、国内唯一のプロアドベンチャーレースチームであるTeam EASTWINDの主力メンバーとして活躍中。

●チャレンジの全貌はコチラから

http://www.greattraverse.com/

 

人力のみで日本百名山をひと筆書きでつなぐプロジェクト「日本百名山ひと筆書き」。総距離7800kmに及ぶ本プロジェクトを2014年4月1日にスタートし、10月26日に達成された田中陽希さんに、昭文社も「山と高原地図」と「ツーリングマップル」をご提供させて頂いてたんです。
そこで本コラムでは、陽希さん流の地図の使い方のヒケツについて伺います!

出発前に、『山と高原地図』にプロジェクトのスタートからゴールまでのルートを記入していきました。このルートの記入と検討作業だけでも、3ヶ月を要し、さらに山と山の間の道程も、歩きやすいルートをGoogleMap等で確認していきましたので、準備には最終的に半年近くをかけました。こうしたルートプランニングでは、200日近いプロジェクト、その一日一日の道のりをゴールから逆算してリアルにイメージするので、それだけで大分疲労しましたね(笑)
ただ人力での踏破については誰も挑戦したことがないプロジェクトでしたので、どういう道順で百名山をひと筆書きするか、ルート決めが非常に重要だったんです。例えば、日本アルプスは南下するルートの方が一見進みやすいように思えるんですが、残雪や山小屋の状況等を考慮して、北上するルートを選びました。このように、スタートからゴールまでの道のりをおおまかにでも把握しておけば、各々の山をどの登山口で、どのコースで登っていけばよいかを判断できますし、イレギュラーなコースや日程の変更にも柔軟に対応できます。
自然の中では、人間はとても弱いです。街中では近くの病院に行けばすぐに回復するようなケガが、登山では命取りになることが多々あります。プロジェクト中、自分には“リスク”がかかっているという緊張感は常に持つようにしていました。
そして、無用なリスクは避けるために、入念な準備が必要だったんです。

紙地図は使わずスマートフォンの地図アプリのみを利用する、という人もいると思います。僕自身としては、それを肯定も否定もしないのですが、両方の長所・短所をきちんと把握した上で、選択するようにしたほうがよいと思います。
紙地図の最大の魅力は、一視野でその日のコースを把握することが出来る点ですね。スマホアプリだと画面をスクロールしたり拡大・縮小したりという手間がありますが、紙地図は地図を広げれば、一目でルートを把握することができます。特にみなさんに強くおすすめしたいのが「地図は汚して使ってなんぼ」ということです。その日のルートをマーキングしておけば、自分だけのナビとして機能しますし、目印となる場所ごとに予定経過時間を記入しておけば、今自分が予定より早く進んでいるのか、遅れているのかを一瞬で判断できます。
①ルートのマーキング
②予定経過時間の記入

はすぐに実践できて効果テキメンなので、みなさんにも是非オススメしたいですね。ちなみに僕の場合は、長期間のプロジェクトでもあったので、各行動予定日の出発時間と到着時間も地図に記入していました。
登山中に地図を見ない人が多いな、とプロジェクト中強く感じましたね。日本の地図は、情報の正確さが世界的にもトップレベルなので、是非活用すべきです。紙地図はいちいち大きく広げて使うと億劫になるので、その時いる場所の周辺が見える状態で折り畳んでおき、ポケットに入れておいて、その都度参照するのがイチオシの使い方です。

紙地図は、自分用にカスタマイズしやすいことが最大の長所です。それぞれが工夫しながら使うことが紙地図の醍醐味でもあると思いますね。

陽希メモ「ナビゲーション」
登山中は地図を見ること+今自分がどこにいるのかを絶えず肌で感じ取ることがとても重要です。太陽の向き、地面の傾斜、建物の見え方など、目の前にある情報をフル動員して自分の位置を把握するように努めましょう。時にはコンパスなどの機器を利用して、安全な尾根道、獣道が見つかる(ルートファインディング)こともあります。


プロジェクト中の楽しみは、なんといっても道中での食事でした。提供いただいた『ツーリングマップル』記載のお店などを参考に、お目当ての食事処にたどり着くことを毎日のモチベーションにしていました。西日本では、高知の「ひばり食堂」のカツ丼が群を抜いておいしかったです。「なんでも大きいほうがいい!」がモットーの気のいい店主が出してくれるカツ丼は、ボリューミーでありながら味も抜群で、なおかつ安い。みなさんにも是非行ってもらいたいです。
そうそう、出雲そば、戸隠そば、わんこそばの三大そばは少し迂回してでもかならず食べようと考えていたくらい、プロジェクトスタート直後からずっと楽しみにしていたイベントの一つでしたね。おかげさまで全て制覇しました!

それとやはり、僕のモチベーションの源になったのは、人との出会いでした。はじめは自分から積極的に人に会いに行くことが多かったのですが、NHKの番組の放送が2回を終えた頃には、行く先々の山頂で到着を待ってくださる方、さらには差し入れを下さる方など、大勢の方が僕に会いに来てくれました。自分としては「自分がやりたいことをただ思いっきりやってる」だけなのに、こんなにも応援してくださる方がいるんだと純粋にびっくりしましたね。ただ、はじめは「わざわざ来て頂いて、なんだか申し訳ない」という気持ちの方が強かったんです。特に差し入れを頂くときは、荷物の量とかの関係でお断りさせて頂かざるをえないこともあって。それが、だんだんと純粋に感謝する気持ちに変わっていったのは、僕がプロジェクト中経験したことの中でも大きな変化の一つだったと、振り返って思います。

陽希メモ「田中を探せ! 田中シリーズ」
道中、標識や看板などに「田中」を見つけては撮影してきた「田中シリーズ」。
プロジェクトを楽しむ為の一工夫です。ちなみに一番「田中」を見かけたのは関西地方!地方によって、「田中」遭遇率が違うのは思わぬ発見でした。


チャレンジしたいことがあっても、なかなかタイミングが掴めない方ってたくさんいると思うんです。
タイミングが掴めないっていうのは、やっぱり自分の内側、性格や考え方にあると思うんですね。最近思うのは、“性格は変えられなくても、考え方は変えられる”ということ。なかなか自分の根本にあるような性格は変えられなくても、ものの見方・考え方はきっかけ次第で大きく変わると思うんです。
じゃあ「自分を変えたい」と思ったときに一番大切にしなきゃいけないことってなんだろうと考えると、それはやっぱり「人との出会い」なんだと、僕は思います。人は人との関わりの中でこそ大きく変わるんだ、ということが大自然と向き合うこのプロジェクトを通して僕が得た結論、かもしれないですね。
そう思うと、僕の今回のプロジェクト「日本百名山ひと筆書き」が、だれかのチャレンジのきっかけになれば、これほど嬉しいことはないです。

田中陽希、旅の記録。たくさんの人との出会いがありました。

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