MAPPLE×新しいスタイル

これは、平成初期に実際に販売していた東京の地図を見ながら、平成最後の街並みを歩いてみたら、どんな発見があるかを探るドキュメンタリードラマです。主人公は、昭文社広報担当・ワタル。地図マニア歴40年、地図とともに駆け抜けた平成の世、最後に見えた景色とは……! 東京チズストーリー、始まります。

写真/下屋敷和文

Episode01 チズストーリーは突然に

平成31年4月、品川駅。ここが物語のスタート地点。江戸時代は宿場町として栄えたこの地。現在、品川〜田町の間に高輪ゲートウェイ駅を建設中、さらにはリニア中央新幹線の始発駅が品川駅港南口に建設予定と、新しい東京の玄関口としてますます発達しています。

 

今回は平成元年時に使用されていた、昭和63年6月発行の東京の地図『グランプリ 東京交通規制道路地図』(かなり貴重!)を見ながら、現在の街を歩き、この平成30年間の変化を感じてみたいと思います。もちろんスマホには一切頼らず、平成初期らしく地図頼みでお届けします。

 

基本的に平成の間で道はそんなに変わっていないので、30年前の地図を使っても歩くことはできます。ただ、地図を見ていると感じる変化がたくさんあります。品川区は京浜工業地帯の発祥の地として、戦前から工場が密集していました。平成初期の地図を見ると、まだ駅周辺に工場や倉庫が多いですね。港南側は、JR貨物駅や新幹線基地として使用されていたこともあり、開発がまだ進んでいなかったんですね。

 

倉庫はかなり残っていますが、工場はあまり見かけません。住宅開発とトレードオフの関係になっていったのでしょう。このあたりは現在、住居エリアとして再開発が進んでいます。平成初期の地図では髙島屋の芝浦第一センターがあった場所に、今ではマンションが。ちなみに品川は最新の某住みたい街総合ランキングで6位にランクインしています。

 

あ、電話ボックス発見! ケータイ電話がない時代はみんな電話ボックスを探して電話をかけていました。ポケベルが流行った頃は女子高生が電話ボックスに行列をなしていたりと、すったもんだがありました……。

 

私も公衆電話からテレカで会社に連絡を……。

Episode02 チズという名のもとに

品川から田町まで歩いてきました。平成初期の地図を見ると、駅前に第一勧業銀行の文字が。この頃の地図では、銀行の表記は本当に重要でした。待ち合わせをする際には、誰もがわかる場所、変わらない場所、看板が目立つ場所が有効です。それに該当するのが銀行。銀行は、駅やデパートに並んで、目印としての地位が高かったんです。

 

第一勧業銀行は、平成14年にみずほ統合準備銀行と合併し、商号をみずほ銀行に変更しています。同じ場所に今あるのも、みずほ銀行ですね。

 

ここで平成31年発行の最新の地図『街の達人 全東京便利情報地図』と見比べてみましょう。かなりビジュアライズされているのがわかると思います。情報が多く、この地図でみずほ銀行を見つけるのは少し大変です。地図の中での銀行の地位が下がったことがここで伺えます。銀行は毎年のように商号が変わってしまったり、コンビニATMやネットバンキングの普及で、銀行自体の存在感がかつてより薄れた影響もあるかもしれません。時代の変化にあわせ、最新の地図では、コンビニやチェーン店のロゴが目立つようになりました。

 

再び平成初期の地図を使い、田町の駅から芝浦方面に歩いてきました。「東京ポートボウル」という施設がありますね。実はここには、ほかにもかつて一世を風靡した平成を象徴する名所が存在していたんです! この平成元年時の地図にはまだ載っていないので……

 

平成4年発行の『マップル情報版 東京』を見てみましょう。こちらはご存知、『まっぷる』の前身となるマガジンです。今のガイドブックとは趣が異なり、バブル期の人々のライフスタイルに合わせたスポットの紹介をしています。

 

わかりますか? 「JULIANA’S東京」の文字。そう、お立ち台でジュリ扇を片手に舞い踊るワンレンボディコンのお姉さま方の映像でおなじみ、伝説のディスコ「ジュリアナ東京」があった場所なんです。

 

『マップル情報版 東京』では当時の写真が掲載されています。平成3年にオープンした「ジュリアナ東京」。最寄り駅の田町駅からここまで、徒歩でボディコンの女性たちが訪れている姿は、オフィス街の異様な光景だったようです。数々の伝説を残した「ジュリアナ東京」ですが、実は平成6年に閉店しています。あんなに話題になっていたのに、営業期間はたった3年ほどなんです。

 

バブルの象徴は今はもう見ることができないですけど、その痕跡はかつて発行していた紙の地図にはしっかり残っています。

Episode03 踊るチズ捜査線

港区芝浦・海岸地域、バブル期はウォーターフロント地区と呼ばれていました。最近はベイエリアと言ったほうが通じますね。平成初期の地図を見てもほとんど情報なし。この地図には影も形もありませんが、もうすぐベイエリアの代名詞とも言える名所に到着します。

 

はい、「レインボーブリッジ」です。平成の時代には東京臨海副都心として、ベイエリアが開発されていきます。レインボーブリッジが開通したのは平成5年。平成7年にはゆりかもめが開業、平成9年にはフジテレビ本社屋がお台場に移転します。このままレインボーブリッジを歩いて渡り、お台場方面へ進みたいと思います。

 

と、思ったら……まさかの休館日……。レインボーブリッジには遊歩道があり、通常歩いて進むことができるのですが、運悪く通行できず……。

 

レインボーブリッジ封鎖されてます!!泣

 

あんなに近くに見えているのに……途方に暮れるしかやることがない……。

 

せっかくなので、海を望みながら平成を振り返ろう……。

 

8cmのシングルCDを、ポータブルCDプレイヤーで聴くというエモさ。

 

さよなら平成……。

Episode04 世界の中心で、チズをさけぶ

せっかくなので、ゆりかもめに乗って有明へ。この一帯は2020年の東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場地区となっています。世界中から人が集まり、まさにこれからの東京を象徴するようなエリアです。ちなみに再び平成初期の地図でこのエリアを見てみると、東京ガスの工場や貯木場などしかありませんね。

 

有明駅の眼の前では、まさに有明体操競技場を絶賛建築中。東京の未来を感じることができます。時代はどんどん変わっていきます。平成初期の地図を見ながら平成最後の街を歩いてみたら、平成という時代の濃さと、新しい時代の光を見つけることができました。
激動の平成に起こったいろいろなことを知ると、これからの時代の心構えもでき、先を見通せるような気がしてきます。きっとのちのちまで「“平成って特別な時代”だったよね」と語り継がれるんでしょうね。

 

記念に、使い捨てカメラでパシャリ。

 

みなさんが過ごした平成はどんな時代でしたか? さぁ、平成を名残惜しく感じているあなたにぜひ読んでいただきたいのがこちら! 平成のことがまるわかりの『なるほど知図帳 平成本』です。

 

平成の間に起こった出来事を、政治・経済・事件・ヒット商品・音楽・スポーツ・映画など、各種分野ごとに紹介。平成を駆け抜けた誰しもが楽しめる感動シーンや懐かしい思い出をコンプリートしてお届けしています。平成をなつかしみ、学び直し、「令和」に向かいましょう!