新型コロナウイルス感染症が再拡大する中、2022年の登山シーズンが佳境に突入している現在、コロナ禍を経た人々と「山」とのつきあい方を改めて考察してみました。
登山者はコロナ禍でどう行動したのか、コロナ禍を経て今シーズンの行動や意識がどう変化しているのか、その実態を把握することを目的として、この7月、昭文社運営の「山と高原地図」アプリの利用状況分析とユーザーアンケートを行いました。その調査および分析結果を公開いたします。
調査分析結果は2部構成となります。前半は一定期間内※1の「山と高原地図」アプリ(地図単品購入版)・「山と高原地図ホーダイ」アプリ(サブスク版)のiOS版・Android版合計のダウンロート数(以下DL数)、および「山と高原地図」アプリ(地図単品購入版)のiOS版アクティブユーザー数(各日の直前30日平均)の集計・分析結果です。
後半は「山と高原地図ホーダイ」アプリ(サブスク版)ユーザーを対象に実施したアンケート※2結果を元にまとめた動向・意識調査です。前半、後半それぞれ、登山・ハイキング地図のロングセラー「山と高原地図」を編集する登山地図のスペシャリストが詳細に分析した解説コメントを付記しています。
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■ アプリDL数TOP3は不動!「槍ヶ岳・穂高岳」「八ヶ岳」「北岳・甲斐駒」の人気に揺るぎなし
■ 今シーズンは、日帰り可能でバラエティーに富んだコースの多いエリアが人気上昇傾向
■ コロナ禍の影響?夏山シーズンを越える勢いで「秋ピーク」が到来
■ 「登山歴10年以上」のベテランの5割近くが「コロナ禍で登山頻度が減った」と回答
■ コロナ禍を受け「日帰り登山が多くなった」との回答多数。宿泊登山の復活に注目
※1:集計期間:
「山と高原地図ホーダイ」アプリ(サブスク版)iOS版・Android版合計DL数:2022年4月16日〜7月15日
「山と高原地図」アプリ(地図単品購入版)iOS版・Android版合計DL数:2022年4月16日〜7月15日、2019年4月16日〜7月15日
「山と高原地図」アプリ(地図単品購入版)iOS版アクティブユーザー数:2019年4月16日〜2022年7月15日
※2:アンケート調査概要
調査テーマ : アフターコロナの山登りの意識や行動変化
調査手法 : インターネット調査(かんたんWebアンケート使用)
調査地域 : 全国47都道府県
調査対象 : 「山と高原地図ホーダイ」アプリ(サブスク版)ユーザー
調査期間 : 2022月7月14日(木)~2022年7月24日(日)
有効回答数 : 1548サンプル
【有効回答者のプロフィール】
性別 : 男性74%、女性26%
年齢層 : 50代34%、60代以上27%、40代25%、30代11%、20代以下3%
居住地 : 東京都28%、神奈川県17%、埼玉県10%、千葉県5%、大阪府5%、愛知県4%など
登山歴 :10年以上46%、6~10年28%、1~5年22%、1年未満4%
2022年4月16日~7月15日における「山と高原地図」アプリ全61エリアの総DL数に占める、各エリアの割合を計算した結果、「山と高原地図ホーダイ」アプリ(サブスク版)と「山と高原地図」アプリ(地図単品購入版)双方で、DL数のTOP3が「槍ヶ岳・穂高岳」「八ヶ岳」「北岳・甲斐駒」の3エリアに集中していることがわかりました。
なお、コロナ禍前の2019年4月16日〜7月15日の間の「山と高原地図」アプリ(地図単品購入版)のDL数も同じ傾向が見られており、「槍ヶ岳・穂高岳」「八ヶ岳」「北岳・甲斐駒」はコロナ禍を経ても安定した人気を誇っています。
|| 山と高原地図編集部コメント:「槍ヶ岳は北アルプスのシンボル的な存在、北岳は南アルプスの主峰。どちらも多くの登山者から長年愛され続けている山です。また自然の魅力が溢れる八ヶ岳は、首都圏、関西圏どちらからも比較的アクセスが良く、本格的なコースから気軽な散策まで楽しめる懐の深さが人気の秘訣です。この3エリアの人気の高さは、アプリに留まらず、紙地図の方でも群を抜いています」
夏山シーズンに差し掛かる2022年6月16日〜7月15日における「山と高原地図」アプリ(地図単品購入版)各エリアのDL数の割合を、コロナ前の2019年の同時期と比較してみました。
ランキング上位には変化が見られない一方、日本アルプス以外のエリアが占める割合が増加傾向にあります。「尾瀬」はコロナ禍前の2019年より順位を上げ、アルプスエリアに迫る勢いを示しており、北海道の「大雪山」もTOP10にランクインしました。
また、2022年6月16日〜7月15日における「山と高原地図ホーダイ」アプリ(サブスク版)のDL数ランキングでも、「尾瀬」は例年夏シーズンに人気が上昇する「白馬岳」と同じ割合を示し、北アルプスを代表する山岳エリア「剱・立山」にも僅差で迫る結果となりました。
|| 山と高原地図編集部コメント:「山と高原地図アプリのユーザーに登山歴の長い方が多いことや、山小屋をはじめ山域関係者のみなさんのサポートも手厚いことから、コロナ禍でも<登山の聖地>日本アルプスの支持率が高いのは予想通りでした。一方尾瀬に関しては、コロナ禍で登山を始めた方々をはじめとして、日帰り可能で密にもなりにくく、かつ景観や楽しみ方のバラエティーに富んだコースの多いエリアに魅力を感じた人々からの支持を集めたのでは、と分析しています」
2019年4月16日~2022年7月15日における「山と高原地図」アプリのアクティブユーザー数(各日の直前30日平均)の推移をグラフにまとめると、コロナ禍前の2019年からの3年間に、以下の変化が起きていることが見えてきました。
・・・2019年は、5月と8月に利用ピークがありました。そしてコロナ禍の影響を大きく受けた2020年は、5月のアクティブユーザーが例年より大幅に減少。しかし感染者数が多少落ち着いた8月から徐々に回復し、GoToトラベルキャンペーンなども相まって、10月頃に前例のない「秋ピーク」を迎えました。
・・・2021年もコロナ禍の影響があったものの、数字的には2019年と同等か上回っています。例年通りに5月と8月にピークがある一方、10月にもハイシーズン並みの「秋ピーク」が来ました。この頃感染者数が落ち着いたのも一因ではありますが、前年度の「秋ピーク」を経て、秋山登山の母数が増えた可能性も否めません。特に「山と高原地図ホーダイ」アプリ(サブスク版)は、2021年を見る限り、春山・夏山のピークと比較すると「秋ピーク」の傾向がより顕著です。
|| 山と高原地図編集部コメント:「登山はコロナ禍においても、オープンエアーという環境であるが故に、密を避け、爽快なおでかけを楽しめるということから、新たなファンやリターンユーザーが一定数増えたのではないかと推測しています。
『山と高原地図』アプリユーザーのみのデータではありますが、おかげさまで長年、大変多くの読者・ユーザーにご支持いただいているブランドであることから、ある程度登山者のトレンドを捉えているものと考えられます。感染者数の推移や登山の手助けとなり得る観光政策など、様々な要因が絡む部分ではありますが、今後の登山者の動きと時勢の関係性については、興味深いものがあります。」
2022年7月14日〜7月24日の間に「山と高原地図」アプリユーザーを対象にアンケート調査を実施しました。1548サンプルの有効回答を集計・分析し、コロナ禍を受けたこれからの山登りの意識や行動変化についてまとめました。
「登山頻度はコロナ禍の前と後で変わりましたか」(単一回答)の設問に対しては、全体的に「変わらない」(42%)が最も多く、「減った」(39%)、「増えた」(15%)、その他(3%)と続きました。さらに登山歴別に分析すると、登山歴10年以上の登山者の5割近くが「減った」と回答、他に比べて減少幅が大きい、という結果となりました。
「コロナ禍の前と後で、登る山の選択に変化がありましたか」(単一回答)の設問に対しては、全体的に「以前と変わらず好きな山に登っている」(59%)が最も多く、「近郊、近隣の山を中心に選ぶようになった」(37%)、「より遠方の山を目指すようになった」(4%)と続きました。登山歴別でも割合はやや異なるものの、順位に変化はありませんでした。
|| 山と高原地図編集部コメント:「登山歴10年以上で頻度が『減った』と回答したユーザーがよく登る山をさらに分析したところ、その6割以上が『近郊、近隣の山を中心に選ぶようになった』との回答でした。コロナ禍でも安心安全な登山を楽しめるよう、多くの方が工夫を凝らし、登山を続けていたことがうかがえます」
「コロナ禍になって困ったこと、制限されたことがあれば教えてください」(複数回答)の設問に対しては、登山歴を問わず全体的に「山小屋などの施設が利用ができず日帰り登山が多くなった」(562件)が最も多く、「登山者の少なさそうな山を探すようになった」(510件)、「行動制限で好きな山に行けなくなった」(473件)と続きました。
また「その他」に関して、挙げられた具体的な回答例(主なもの)は以下の通りです。
・・「テント場が予約制になり山行計画の管理が難しくなった」
・・「山小屋泊の際に、シュラフカバーを持参するなどの追加の荷物が増えた」
・・「事故にあった場合の医療機関や小屋への負担を考えると、以前に増して慎重に準備や下調べをするようになった」
・・「コロナ以前より、交通手段などにも気をつけなくてはいけなくなった」
・・「車で行く事が多くなり、ピストンや周回が多く縦走がやりにくくなった」
・・「冬山、岩場など単独行動が危険な登山ではパートナーを探せるか、が重要な制約となった」
・・「平日登山をこころがけている」
|| 山と高原地図編集部コメント:「登る山の選択についての設問に対して『以前と変わらない好きな山に登っている』との回答が一番多かったのですが、山域は変えていなくても、難易度が下がるようルートを選んだり、歩行時間や距離を全体的に短めに調整するなど、登山のスタイルに変化が見られました。また宿泊を伴う登山の場合は、以前より準備段階で入念に計画される方がかなり増えた印象です。やはりコロナ禍の影響は大きかった、と改めて感じる結果でした」
「コロナ禍で新たに発見した山の魅力、視点などはありますか」(複数回答)の設問に対しては、登山歴を問わず全体的に「改めて山が好きであることを実感した」(781件)が最も多く、「近郊、近隣の山のよさを再発見した」(548件)、「地図やアプリの重要性を認識した」(494件)などと続きました。
特に登山歴5年以下の方から「地図やアプリの重要性を認識した」について159件(登山歴5年以下の方の39%)もの回答があり、個人行動が増えたことによる安全対策へのニーズの高まりを感じさせる結果となりました。
また「その他」に関して、挙げられた具体的な回答例(主なもの)は以下の通りです。
・・「人数制限が設けられている山小屋が多く、個室のように使えるところもあり、山小屋泊の楽さを知った」
・・「(山)小屋泊をテント泊に切り替えた」
・・「コロナ禍前は3000m峰や岩陵帯を好んで登っていたが、(コロナ禍)後は尾瀬の湿原や箱根の山等まず行こうとしなかった場所に行く機会が持てたのはよかったと思う」
・・「人が自粛すると登山道はこうも簡単に自然に戻るのだなあ、と登山道の整備のありがたみを感じるようになった」
・・「オンラインでのセミナーや、SNSでの他人の山登りの記録を見るという楽しみができた」
・・「自宅で登山関連の書物を読む機会が増え、安全意識が高まった」
・・「以前より増して解放感がある」
・・「登ることだけが山ではないと認識しました。天気の良い日に、好きな山を眺めたりする、近くまで行って人気のない公園でのんびりと山を眺める、等楽しみがのバリエーションが増えました」
|| 山と高原地図編集部コメント:「コロナ禍を経て、近郊、近隣にある山への注目度が間違いなく上がりました。数々の山を踏破した登山歴の長い方々にも、『ご近所登山』で新たな発見がたくさんあったことが回答からもうかがえました。今後の出版物改訂などの際に、こうした傾向をしっかり反映し、近郊、近隣の山の登山情報も充実させたいと思います。もう一点、登山歴が浅い方に地図やアプリの重要性を感じていただけたことについては、今後に向けてプラスと捉え、さらなる普及、安全安心な登山のためのサポートを改めて充実させなくては、という責任を感じました」
今回の分析・調査結果全体について、山と高原地図編集部・アプリチームのまとめコメントです。
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「まず、アプリユーザーのDL数やアクティブユーザー数などの指標分析では、尾瀬や大雪山の人気が上昇していることや、これまでなかった10月の『秋ピーク』の出現など、長年登山を見続けている私たち編集部にとっても新鮮な発見があり、今後も動向を見極めてまたご報告できれば、と思っております」
「今回のユーザーアンケートは、短期間にもかかわらず1,500名以上ものユーザーの方にご回答いただきました。登山者の山への思い、情報発信や共有に対する意識・関心が非常に高いことに改めて感動するとともに、身の引き締まる思いです」
「コロナ禍の下でも、山を愛する気持ちに変わりはなく、各自工夫を凝らし苦労を重ねながら登山を楽しむ姿が浮かび、日本の登山文化の広がり、深さを感じました。今はただ一日も早いコロナの終息を願うばかりですが、引き続き登山時のマナーや安全意識をさらに高めていくことの重要性を訴えていきたいと思います」
「アンケートの自由回答欄では、紙地図やアプリについて有意義なアドバイスや改善へのご意見を多数いただきました。ご期待に沿えるように、商品の企画・内容改善につなげてまいります」
山と高原地図は、今後もみなさんの安心安全な登山をサポートしてまいります。ぜひこの夏・秋の素敵な登山を「山と高原地図」「山と高原地図アプリ」とともに、お楽しみください。
「山と高原地図」シリーズは1965年創刊の『山岳地図』を起源とする登山地図のロングセラーです。61点の各商品について、そのエリアに精通した<山のプロ>が現地調査を実施、その成果を元に毎年改訂している日本唯一の全国展開の登山地図シリーズとして安定した人気を獲得してまいりました。
情報の確かさ、地図の見やすさ、コースタイムや危険箇所の表示、アクセス情報・付録の充実ぶり、耐水紙の採用等から登山に必携の地図との定評をいただき、安心安全の地図ブランドとして定着しています。
山と高原地図をお手持ちのスマートフォンでも見られるだけでなく、GPSを使って地図上で現在地を確認したり、自分が登ったルートの記録をする、といった機能により、登山・ハイキングがますます楽しくなるアプリになっています。
記録したルートをメールで送信して、PCで登山記録を管理したり、登山コミュニティサイトに投稿して記録を共有することもできるので、活用方法は無限に広がります。地図データは全てスマートフォン本体に格納しますので、携帯電話の電波が届かない山中でも安心して使用することができます。
|| アプリラインアップ
アプリ名称 :山と高原地図ホーダイ
販売価格 :定期購読で全エリアを使い放題(初回ダウンロードから7日間は無料)
対応端末・OS :iPhone5s以降(iOS 11.0以上)/ AndroidOS 5.0以上
アプリ名称 :山と高原地図
販売価格 :アプリ本体 無料、地図1エリア600円(無料のサンプル地図「高尾山」がついています)
対応端末・OS :iPhone5s以降(iOS 11.0以上)/ AndroidOS 4.0以上
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*引用・転載時の出典表記のお願い
本調査結果をご使用される際は、出典元を明記していただきますようお願い申し上げます。
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