-佐藤さんは、もともと旅行がお好きだったんですか?
そうですね、単純に「旅」することは大好きでした。地図で大体の目的地だけを決めて自由に放浪し、出会った土地の人と話をする…というようなスタイルの旅をよくしていました。
あるとき、以前訪ねたことのある、とある地域の歴史や背景を知る機会があったんですが、それを知ったことでその地域での記憶、印象が私の中で全く違ったものになったんです。こんな歴史背景だから、あの建物があったんだ、とか、この産業が栄えたんだ、とか、いろいろなことに合点が行くような気持ち良さがあって。その経験は私にとって結構衝撃的でしたね。と同時に、これまですごくもったいないことをしていたな、と感じました。それからは、どこかに旅行するときには、その地域のことはできるだけ調べてから訪ねるようにしています。あとは、ただ調べるだけではなくて、調べた知識から自分なりの仮説を立てるようにしていますね。これが楽しいんですよ!
例えば、私が長野県飯田市という場所を訪ねたときの話です。飯田市は日本一の焼肉の街で、ラム肉をよく食べる街(※)なんですが、ふと、なぜだろう?と思って。
そのとき私がちょうど読んでいた「望郷の鐘 中国残留孤児の父(山本慈昭著)」という本に、満州開拓団として飯田市の人たちが大陸に渡り、そして帰ってきたという記述があったんです。そこで、その人たちが大陸のラム肉文化を持ち帰ってきたのかも?という仮説を立てるんです。
実際に飯田市を訪ねた時に、地元のおじいさんたちにそんな話をしてみると「そういえばラム肉は第2次世界大戦の後くらいから食べ始めたかも…」なんて言葉が出てきて、やっぱりそうかもしれない!なんて思ったりするわけです(笑)。学術的に実証するわけではないんですが、そんな仮説を立ててから行くと、地元の人たちとの会話のきっかけにもなりますし、土地の歴史を自分なりに紐解く感じで、それが面白いんですよね。
※長野県飯田市は焼き肉店が多い街ランキング 第1位、ラム肉消費量は北海道に続き第2位。