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おでかけと天気は切っても切れない関係。これからのレジャーシーズン、おでかけを全力で楽しむにはまず気象を知るべし!ということで、今回 は日本気象協会さんにお邪魔して、この道 23 年!ベテラン気象予報士の関田さんに最新の気象予報の現場と知っておくと便利な気象情報活用方法をお伺いしました。

 

●プロフィール
関田佳弘(せきたよしひろ)
1964年(昭和39年)7月4日生まれ。栃木県足利市出身小さい頃から自然科学が好きだったことから、大学では物理学(エアロゾルなど大気物理)を学び、気象の世界へ。1992年に日本気象協会東北本部(現東北支局)入社。2004年からは東京本社にて気象予報士としてのキャリアを積む。趣味は筋トレ・ウォーキング・ツーリング。

 

今回、気象協会に突撃してくれたのは昭文社の読者レポーター「りんごさん」。気ままにおでかけするのが好きなりんごさんですが、この夏はお天気で失敗したくないみたい…?

 

りんごさん:どうもこんにちは!天気について教えて欲しいんですが!
関田さん:いやいや…君、誰?こんなところまでどうやって上がってきたの?
りんごさん:あれっ、日本気象協会って書いてあるから来ちゃったけど…よく見たらこの部屋、すごくいい眺めですね!
関田さん:地上55階、地上からの高さは約200mくらいかな。日本気象協会はここ、サンシャイン60で365日24時間、年中無休で東京の天気を見守っているんだよ。この高さからだと、様々な気象現象も観測できるからね。ここから撮影された竜巻や大雨事例などの写真が資料として残っているよ。さて、君は、天気について知りたいのかな?
りんごさん:あっ、はじめまして、私、りんごです!そうなんです!実は私、雨女で…おでかけに行っても、雨に降られてばかりなんです。傘なんて何本買ったかわかりません。だから、天気のことを知って、この夏のおでかけをもっと楽しくしたいんです!
関田さん:ふんふん…えっ、雨女?それは、科学的にはありえないね。
りんごさん:えっ、そうなんですか!?
 
関田さん:それはそうですよ(笑)行く先々で雨に降られてしまうということだけど、天候の急な変化で、出費をしたことのある人は27.8%、つまり4人に1人くらいというデータがあります。ちなみに出費の平均は7,478円。これは雨のせいで傘を買ったり、寒さのせいで防寒具を買ったり、交通機関が止まって宿泊したりといった出費ですね。
りんごさん:そんなに!雨に降られているのは私だけじゃないんですね!
関田さん:おでかけの際にはしっかりと天気をチェックすることが大切ですよ。りんごさんは天気予報はなにでチェックしていますか?
りんごさん:えーっと…私、前日の予報も見ないでおでかけしちゃうこともあります…。
関田さん:それはもったいない!今はかなり詳細なデータを誰でも見ることができますから、そういったものからきちんと予定を立てれば、おでかけはもっと楽しくなります!それに、慌てて傘を買うことも減ると思いますよ。
 
 

聞いてみよう!お天気の疑問「雨男・雨女っているの?」

答えは×!その人がいるからといって雨が降るなんてことはありえません。ただ、人は何事もなく晴れていた時よりも雨に降られて大変な思いをした、ということの方をよく覚えているもの。いままでおでかけは雨ばかりだった…、という人は、だからこそおでかけした場所が強く記憶に残っているのではないでしょうか?晴天よりも、印象深いおでかけになったともいえますね!

 

 

りんごさん:じゃあ、天気予報はどれを見れば確実なんですか?一番当たるやつを教えてください!
関田さん:りんごさん、天気予報というのはそんなに単純なものではありませんよ。基本的には天気は「数値予報」。コンピューターが様々なデータを基にシミュレーションして、気象予報士がその結果を解析しているんです。気圧、気温、風などの値と世界中から送られる観測データをもとに未来の気象状況の推移を計算するんですよ。これらのデータも日夜新しいものに刷新されています。
りんごさん:そういえば、気象衛星が新しくなったってニュースを見ました!写真がとっても綺麗なんですよね。
関田さん:よく知っていますね!ひまわり8号の打ち上げは2014年10月7日でしたが、2015年の7月7日から本格運用が始まりました。このひまわり8号は得られるデータ量が今までの約50倍、世界で初めてカラー画像を撮影できる最新センサーを搭載しています。解像度も大幅に向上したので、画像の鮮明さは一目でわかります。また従来約30分を要していた静止衛星から見える範囲の観測を10分に短縮して、特定の領域を高頻度に観測することが可能になりました。日本周辺の地域なら2.5分毎にこの鮮明な画像が観測できるんです。
りんごさん:すごく綺麗ですね!台風の様子もすごくくっきりわかります!これで、天気予報の精度もぐんと上がるわけですか!
関田さん:それが、そういうわけではありません。
りんごさん:あれっ、そうなんですか?
関田さん:先ほども言った通り、天気予報は非常に膨大な量のデータをすごいスピードで処理することで予想をしています。ですから、そのデータが急に増えたからといってすぐに全てそれに合わせて計算し直せるわけではないんですよ。ですが、これから時間をかけてそのカスタマイズやチューニングをしていくことで、予報の精度は確実に上がっていくでしょうね。
りんごさん:なるほど。ちなみにひまわり8号になってすぐに変わることってあるんですか?
関田さん:もちろんありますよ。一番大きいのは、観測できる波長が5波長から16波長になったこと。これはつまり「色」「温度」がわかるようになったということです。たとえば、これまで雲と見分けが付きにくかった黄砂や、噴火の際の噴煙の判別が容易になりました。黄砂の分布や噴煙、火山灰の飛散区域などはこれまで計算・調査で把握していましたが、リアルタイムでわかるようになりました。
りんごさん:それはすごい進歩ですね!
関田さん:台風も、天気図や静止画だけでは分かりづらかった大きさや勢力が、一般の方でもわかるくらいはっきりと見えるようになりました。一般の方にもわかりやすいというのはとても大切なことで、避難勧告などを出した時にも、「こんな大きい台風なら、避難しなくちゃ!」など、しっかり意識していただけるようになると思います。
 
 

聞いてみよう!お天気の疑問「「降水確率0%なのに雨が降ることもあるのはどうして?」

答えは…うーん。これにはあまり知られていない事実があるんです。

名付けて「0%に隠れた二つの雨」。降水確率とは「6時間に1mm以上の雨が降る確率」のことです。つまり、1mm未満の雨は0%に含まれているんです。わずかな量の雨、これが一つ目の隠れた雨ですね。

また、降水確率0%とは、同じ条件で100回のうち降雨回数が5回未満のこと。実は、4回は雨が降っているんです。4%の雨、これが二つ目の隠れた雨です。

「降水確率0%」でも、大気の状態によって雨が降る可能性もあるんです…。
 
 

 

関田さん:では、気象予報の現場を少しだけ見学してみましょうか。
りんごさん:この部屋ですね…コンピュータと、天気図がたくさん!
関田さん:日本気象協会では気象庁から送られてくる観測データをもとに、日本気象協会のコンピュータによる独自の予測データを算出し、それをもとに気象予報士が予報を決定しています。コンピュータが様々なデータをもとに天気予報を計算しますが、その数値が完璧というわけではありませんから、算出されたデータをもとに、気象予報士が持つ知識や経験、過去データの検証などから総合的に判断して、予報を決定していくんですよ。
りんごさん:放送室やスタジオもあるんですね。
関田さん:ここには経験豊富なスタッフが常駐し、1日2交代~3交代で365日24時間、休む事なく予報業務を行い、常に最新の情報を発信しています。台風や大雪の場合は増員してさらに細かい分析をすることもありますから、仮眠室も用意されています。
りんごさん:365日24時間!大変なお仕事なんですね。
関田さん:気象という非常に規模の大きなものを扱っていると、最初はごくわずかだった数値の誤差が、最終的に大きなずれに繋がってしまうこともあります。天候は人命に関わることですから、24時間、常に観測・予報し続けなくてはなりません。
りんごさん:予報士さんによる最終的な調整が不可欠なんですね。
関田さん:もちろん、大きな誤差をなくすため、数値予想においても様々な工夫を行っています。例えば、アンサンブル予報という手法。最初の段階で、少しずつ異なる数値でコンピュータに計算させ、平均やばらつきの程度をみながら最も起こりやすい現象を予報することで、大きなずれが生じるのを防いでいるんです。
りんごさん:オレンジの線でみると、進路がかなり違いますね!
関田さん:数値をそのまま予報にするのではなく、こうした調整やこれまでの傾向、直前の気象状況など、気象予報士は様々な要因を総合的に判断しているんです。
りんごさん:知識や経験だけでなく、数値予測の際にも調整が必要なんですね。
関田さん:そうですね。けれど、ひまわり8号も稼働しはじめ、今後はコンピュータによる数値予報の精度もゆっくりとですが確実に上がっていくでしょう。予報士の仕事はこれからもっと「解説」という部分が大切になってくるでしょうね。
りんごさん:「解説」ですか?
関田さん:アドバイスといってもいいですね。コンピュータが弾き出す数値の予測データがあれば、その場その場の天気はわかるかもしれません。ですが、この日この山にこのくらいの量の雨が降るから、この地域の方々はこの場所に避難するべきです、といったことまではなかなかわからない。気象情報とは、天気の様子だけではなく、それに対してどのような行動をとるべきかまでの情報が必要になってくるでしょう。気象情報をそれを読み解いたり理由を説明したり、一般の人によりわかりやすく伝えることが、これからの予報士にとって大切な仕事だと思います。
 
 

聞いてみよう!お天気の疑問「天気は誰でも予想していいの?」

答えは…うーん。予想だけなら自由にしても問題ありません。ただし、それを一般に広めるというのは気象庁の許可が必要です。これには注意警報を365日24時間いつでも受けられる必要があるので、一般の方では難しいでしょうね。また、出ている予報を改変してはいけませんが、解説するのは問題ありません。テレビのアナウンサーがコメントを交えて読むのは問題ないんですよ。

 

 

りんごさん:天気予報をつくるのも大変なお仕事なんですね…。私もしっかり天気予報をチェックしなきゃって思いました!
関田さん:それはよかった。お天気の情報はたくさん発信されていますから、目的に合わせて何を使うかが大切です。1か月予報、週間予報、天気予報に加えてレーダーの情報や衛星からの最新情報もWebサイトやアプリからチェックすることができますよ。
りんごさん:そ、そんなにあるんですね…。
関田さん:ちなみに、ほとんどの気象予報士はおでかけの1週間前から週間予報を確認して、前日までいろいろな情報を交えて、ある程度の予測を立てながらおでかけに備えていますね。
りんごさん:ふむふむ…1週間前ですね。
関田さん:週間予報を見る時は、信頼度にも注目です。信頼度とは3日目以降の降水の有無の予報について「予報が的中しやすい」ことと「予報が変わりにくい」ことを表す情報で、天気予報専門サイトtenki.jpの地方別天気予報ページでも、A、B、Cの3つが表示されているのがわかります。ここで信頼度が高ければおおむね予報を信じておでかけの予定を調整します。
りんごさん:信頼度っていうんですね!知りませんでした!
関田さん:予定の日が近くなったら、天気予報で降水確率などをチェックします。基本的に傘は持って行きますが、降水確率によって小さめの折りたたみで良いのか、大きめの傘の方が良いのか、レインコートや長靴の方が良いかなどを判断しますね。宿泊の場合は替えの靴や靴下、タオルなどの用意もここで決めていきます。
りんごさん:慌てて購入せずに済みますね。
関田さん:その通りです。また、おでかけ先のガイドブックをみながら晴れた場合のコースと雨でも楽しめるコース、両方に目星をつけておくといいでしょう。
りんごさん:ふむふむ。
関田さん:最後に、おでかけ中はレーダーの情報をチェックしましょう。今実際に雨が降っている地域や雲の動きがわかりますから、雨宿りしてやり過ごすべきか、その日の予定を変更すべきかなど、細かな調整ができますよ。
りんごさん:1、10日間天気情報、2天気予報、3、レーダーですね!サイトをブックマークしておこうっと!
関田さん:おでかけの時だけでなく、普段から予報を意識しておくことも大切ですよ!おでかけの予定を立てる時も、いろいろな場面を想定しておくと旅先で慌てずにすみますし、もし雨の場合でも楽しく過ごすことができると思いますよ。
 
 

聞いてみよう!お天気の疑問「お天気のことわざって当たるの?」

答えは…うーん。例えば、「夕焼けがきれいだと明日は晴れる」は、日本の天気は基本的には西から変わりますから、夕方に西が晴れていれば当然晴れる可能性が高いですが、台風などは西からとは限りませんね。「ツバメが低く飛ぶと雨」は湿度が上がると小さな虫は高く飛べなくなる、ツバメは虫を食べるために低く飛ぶ…湿度が上がったからといって必ずしも雨になるわけではありません。科学的根拠が全くないとも言えないものもありますが、あまり参考にしすぎないほうがいいですね。

 

関田さん:りんごさんはこの夏どこへおでかけするかもう決めていますか?
りんごさん:今年は山登りにチャレンジしたいんです!あとはおでかけ先では写真をたくさん撮りたいな!
関田さん:それはいいですね。ただ、今年の夏は太平洋高気圧の張り出しが弱いので夏空が安定して続かず、お天気が崩れやすい傾向があるかもしれません。
りんごさん:ええっ、そうなんですね。
関田さん:天気予報をチェックする時に、「大気の状態が不安定」という言葉が出てきたら要注意です。大気が安定していると雷雲は発生しませんが、上層に寒気が入ってきたり、下層に暖気が流れ込んだりすると、その安定が崩れ、雷雲が発生しやすくなるんです。
りんごさん:大気が不安定だとお天気が崩れやすいということですね。
関田さん:その通りです。全国的に局地的豪雨の回数が多くなる可能性がありますから、雲が出てきたなと思ったら、レーダーの情報をこまめにチェックするといいでしょう。ポイントごとのデータだけでなく、全体を見ることが大切ですよ。
りんごさん:わかりました!この夏は雨対策も抜かりなく、脱・雨女できそう!
関田さん:この夏、北日本では、天気は数日の周期で変わりやすく晴れの日が少ないですね。また、東日本の日本海側も平年より晴れの日は少ないですが、東日本太平洋側と西日本、沖縄・奄美では晴れの日が多くなりそうですよ。
りんごさん:沖縄もいいですね!いいお天気なら、いい写真も撮れそうです!
 
 
 

聞いてみよう!お天気の疑問「梅雨明けのおでかけには山がおすすめ、って本当?」

答えは○!「梅雨明け十日」という登山用語もありますが、梅雨が明けてから10日間くらいは、太平洋高気圧に覆われて安定した夏空が続くため、夏山登山には最適です。例えば、東京では梅雨明け10日の日降水量1mm以上の出現率は11%(ほぼ1日)で、平均的な梅雨明け前の出現率より25%も低くなります(2001年~2010年)。ただし、夏山の天候は変わりやすいもの。登山前には気象情報の確認をしっかりすることが大切ですよ!ちなみに、梅雨明けの海は「土用波」にご用心を。梅雨明けしたらさっそく海へ!というところですが、天気図を見て、台風が遠く南方にあるときは気をつけましょう。風による波とは異なり、台風からの大きなうねり「土用波」は、沿岸で一気に高さのある「大波」になることがありますから、注意が必要です。台風さえなければ、お盆までは海へのおでかけもいいですね!

 

りんごさん:しっかりした計画が大事なのはわかってきました!でも私、やっぱり気ままにおでかけするのが好きなんです…何かいい方法はないですか?
関田さん:そんなりんごさんにおすすめのアプリがありますよ。これを見てください。
りんごさん:これは…レーダーですか?すごく未来っぽい!
関田さん:これは日本気象協会が開発したGo雨!探知機(ごううたんちき)というアプリです。国土交通省が整備を進めている最新型の気象レーダを使って雨雲の状況を観測しているんですよ。使い方は、アプリを立ち上げて空にかざすだけ。自分の周囲の雨量情報をリアルタイムに表示しますから、「今、この場所」の雨の様子がすぐにわかるんです。最新の気象レーダ(XバンドMPレーダ※)によるリアルタイムの雨量情報が表示されます。急なにわか雨や激しい雷雨など、この夏の雨対策に必須のアプリです。
※XバンドMPレーダとは、局地的な豪雨への対策として国土交通省が整備を進めている最新型の気象レーダです。従来の気象レーダに比べてより早く、より詳細な雨の様子を観測することができ、都市域を中心に全国へ配備が進んでいます。
りんごさん:すごい!これがあれば、雨雲の状況に合わせて行き先を変えられますね!
関田さん:窓のない室内や地下でも使えますから、外の様子がわからない場所でも周辺の天気がすぐにわかりますよ。
りんごさん:使い方も簡単ですね。
関田さん:もうひとつはこれ。携帯型熱中症計。りんごさんのようにアクティブに動き回る方はもちろん、体温調節が難しい赤ちゃんやお年寄りの方などにもおすすめのコンパクトな熱中症計です。熱中症の危険をいつでもチェックできるので、早めに涼しい場所に移動したり、水分・塩分の補給をしたりできます。楽しいおでかけの最中に熱中症になってしまわないように、携帯をおすすめしますよ。
りんごさん:わかりました!これでこの夏のおでかけもばっちりです!
関田さんtenki.jpで、天気予報も忘れずにチェックしてくださいね!
りんごさん:はーい!今日はありがとうございました!
 
 

 
 
気象予報士さんならではの天気予報の見方から、最新のアプリ・グッズのご紹介まで、たくさんお話をお伺いできました!りんごさんも、この夏のおでかけ予定はばっちりみたい!?みなさんもぜひ、天気予報をもっと活用して、楽しいおでかけに役立ててくださいね。

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