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  3. 震災5年 特別インタビュー 東北を見つめて 後編

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1997年よりツーリングマップル東北の担当ライダーとして東北を走り続けてきた賀曽利さん。2011年の東日本大震災の2カ月後から始めた鵜ノ子岬~尻屋崎ツーリングを通じて、東北の太平洋沿岸を走り、東北の「今」の姿を記録し続けてきました。震災から5年の節目である2016年3月、東北の復興への思い、期待について語ってくれました。

プロフィール
賀曽利隆(かそりたかし)
ライダー&ライター

1947年4月1日東京生まれ。スズキのバイクを愛好し、日本一周をはじめ、これまでに世界136ヵ国、146万km以上を走破したバイクツーリングの第一人者。昭文社ツーリングマップルでは1997年より東北の担当ライダーを務める。

●オフィシャルサイト カソリング
http://kasoring.com/

 

さて、ここまでは東北、特に鵜ノ子岬~尻屋崎間のお話をしてきましたが、鵜ノ子岬から南、関東太平洋沿岸部もこの大地震、津波で被害を受けていることを忘れてはなりません。
私は、関東の太平洋沿岸を走る、鵜ノ子岬~洲崎(すのさき)間でのツーリングも行っています。東北へ向かう出発点の鵜ノ子岬から南へ、房総半島の先端の洲崎まで。関東沿岸部全域を見て回ろうという思いからこのルートを選びました。
 

関東地方では、東北と比べて死者数などの被害は少ないものの、地震・津波による被害を受けていること、また、復興がなかなか進んでいないことなどを感じていました。
たとえば、鵜ノ子岬の南に位置する茨城県有数の漁港、大津港は、津波で深刻な打撃を受けた場所のひとつです。漁港こそ早くに人が戻り賑わってはいましたが、震災から2年近く経ったころに訪れた際も、地震と津波でズタズタに破壊されてしまった岸壁が痛ましく残り、海中の土砂を取り除く作業も継続されていました。

2014年に完成した避難タワー

大津港を始め、日立、久慈、常陸那珂、阿字ヶ浦、大洗、鹿島…洲崎に至るまでの間、関東の方々からの、「東北の被害は甚大だが、関東も深刻な被害を受けている。報道などは東北の被害ばかりで、忘れられているように思うときもある」といった声も耳にしました。
茨城在住の友人から、冗談半分に「賀曽利さん、東北へばっかり行っているけど、関東だって大変なんだよ」と言われたこともあります。この言葉には、いい視点をもらったと思っています。この災害については、もっと広い視野とさまざまな視点をもって向き合わなくてはならないな、と、改めて思い直すことができましたから。
三陸は度々津波に襲われていることもあり、山田町のような津波の碑がいくつもあるのですが、犬吠から南にも津波伝説というのは結構伝わっているようです。そういった碑を見て回るというのもやっていきたいですね。2016年は改めて5年目ということもあり鵜ノ子岬~洲崎間のツーリングにも出かけようと思っています。
 

茨城県の太平洋側のほぼ中心、首都東京からは約100㎞の距離に位置する大洗町は、震災以前までは観光・保養地として年間約560万人もの観光客数を誇る町でした。しかし、東日本大震災による津波などの実被害や福島第一原子力発電所事故による風評被害により、観光客数は大幅に減少してしまいました。
「もう町に人が戻ってくれないかもしれない…」そんな大洗の危機を救ったのが、バンダイビジュアル制作のアニメ「ガールズ&パンツァー(通称ガルパン)」でした。
 
放送が始まり、アニメの人気が高まり始めると、舞台として描かれた大洗の風景を一目見ようとアニメファンの人々が大洗に訪れはじめました。そこで、街の有志や商工観光課をはじめとした大洗の街全体が、アニメを通した大洗のPRに乗り出したのです。
 
アニメを見て大洗にやってきた人々に、どうやって大洗のことを知ってもらえばいいのか。その答えの一つが、商店街に設置されたキャラクターの等身大パネルでした。キャラクターと実際の場所のつながりまで考えて配置されたパネルを通して、商店街の方たちはファンの方たちに町のことを、ファンの方たちは町の人にガルパンのことを、それぞれ教え合うといった交流が生まれているそうです。
 
被災地への観光客数が軒並み伸び悩む中、2013年に行われた大洗の「あんこう祭」では、アニメ声優によるトークショーなどのタイアップ効果もあってか、震災前の3倍近く、なんと約10万人もの来場者を記録しました。
アニメの力だけではなく、街全体の復興への意気込み、そして風評被害に負けないという思いが、このイベントに結実したとも言えます。
 
こうした大洗の取り組みは、観光庁主催第1回「”今しかできない旅がある”若者旅行を応援する取り組み表彰奨励賞」や、「いばらきイメージアップ大賞」、経済産業省「がんばる商店街30選」への選定など、多くの評価を受けています。
 
昭文社ではそんな大洗町とガルパンについて、2度にわたって取材しています。ぜひあわせてご覧ください。

   

震災から5年の節目を迎えるにあたり、また鵜ノ子岬~尻屋崎間のツーリングに出かけようと思っています。何度も被災地域を回りながら思うことは、復興がどんどん進んでいく姿は、やはりいいものだなということですね。

ひとつ大きかったのは、3年目に瓦礫が撤去されたことでしょう。被災された皆さんは、「あれ(瓦礫)を見ているとつらい」とよくおっしゃっていましたから、瓦礫がなくなり、やっとこれからだという思いになられたのではないでしょうか。また、4年目には、多くの風景ががらっと変わったという印象を受けました。大きな被害を受けた地域で、沿岸の盛り土が始まり、まさに佳境を迎えています。陸前高田市では愛宕山から削られた掘削土が、空を舞うような大きなベルトコンベアで高田地区の土台を作っています。4年でやっとまちづくりの土台までたどりついたということです。あとはこの土地が、かつての賑わいを取り戻すのを待つばかりです!

漁港の賑わいには東北の強さを感じる

これは、東北の強さというか、分厚さのようなものを感じるのですが、まず漁港の整備・復活はものすごく早かったんですね。三陸沖と言えばまさに世界の水産資源の宝庫。私たちも小さいころから社会科で習うと思いますが、親潮と黒潮がぶつかる大変豊かな漁場です。そんな海への信頼や誇りがそうさせるのでしょうか。漁業に携わる方々は本当に逞しい。石巻の日本最大級の魚市場も完成しましたしね。市場ができればその周辺に工場やお店も戻ってきます。大船渡や小名浜にも新しい市場ができて、一気に活気が戻りました。
市街の復旧は漁港とは対称的にゆっくりですが、それでも道路や鉄道の復旧とともに徐々に活気付いてきたようにみえますね。JRの石巻線も全線復旧し、女川は駅や女川温泉ゆぽっぽ、商店街の復活で、息を吹き返したように賑わいはじめています。亘理町・荒浜では阿武隈川の河口にある「鳥の海」の温泉が営業を再開していましたから、心待ちにしていた方々が多く訪れているようです。こうしたことは、本当に心が暖かくなります。

 

 
    賀曽利さんも使っていたという「東日本復興支援地図」

昭文社では、2011年6月に「東日本大震災・復興支援地図」を刊行し、それに先駆け復興支援に携わる機関へ5月26日から無償提供させていただきました。「東日本大震災・復興支援地図」は東北地方および関東地方太平洋沿岸部地域の被災前の状況と被災範囲が把握できる地図帳で、「地図」という情報媒体が、被災した地域において様々な用途にお役立ていただけるのではとの思いから、震災復興支援の一環として作成し、各機関でご利用いただきました。

また、現在※昭文社発行の一部の地図は、2011年以前のものとは若干異なる表示を採用しています。
※2016年3月現在

「浸水エリアは灰色の網かけで表現しています。また、津波で流された建物や道路も地図には残し、役所や学校などは名称に『移転中』などとつけています。これは、被害に遭われた地域にお住いの方々にはもちろん、遠方からその地域を訪れた人へも、被災前の街の姿が伝わるようにと思ってのことです。また、2011年以降、復興の進み具合は場所によってばらばらでしたから、不通となっている鉄道は実線で残す、計画されている自動車道は点線で書き入れるなど、現地の方々にもわかりやすいよう地図表示を工夫しています。
毎年長期休暇にはライフワークとして東北地方沿岸部を巡っているという地図編集担当者は、こう話します。
「1日も早く、以前のように旅行者が行き交う街になって欲しいと祈りながら、毎年の変化を書き入れています。5年の節目に、これまで東北に行ったことがないという方も、ぜひ東北を訪れていただきたいと思います。」
昭文社は、今後も
出版・観光ソリューション事業等を通じて、震災で被害に遭われた地域のみなさまを応援してまいります。

2016年3月11日に、15度目の鵜ノ子岬~尻屋崎ツーリングに出発しようと思っています。震災5年の節目として、今回も東北の皆さんの顔をたくさん見て回りたいですね。また、震災から立ち直って東北本来の面白さを取り戻しているエリアは思い切り楽しみたいと思っています。 前回に比べて新しい街もたくさんできているでしょうし、オープンした新しい施設も漏らさず回りたいです。福島県の塩屋埼灯台に登って海岸線を一望して、小名浜に揚がる魚を食べて…小名浜から出ているクルーズ船にも乗ってみたいと思っているんですよ。ツーリングの定宿にしている四倉舞子温泉「よこ川荘」の女将や、東北に住むライダー仲間たちとの交流も楽しみのひとつです。 もちろん、津波関連の遺構や碑を巡ることや、福島第一原発周辺の通行止め箇所の把握もしに行かなくてはなりません。波倉からは福島第二原発を望むことができますから、その姿は毎回見に行くようにしています。 私は毎年の変化を見るのが本当に楽しみなんです。震災直後、何もないところに描いた理想と、現在のギャップがあったとしても、それを乗り越えよう、埋めていこうという気概を目に焼き付けたい。そして、今後何年かかっても、その理想が実現されていくさまを、この目で見ていたいのです。

東北のツーリング仲間と一緒に走ることも

最近、嬉しいことがありました。東北に住んでいるライダーの方々が「賀曽利さんと同じように、東北をどんどん走り回っています!」という声を届けてくださるんです。私は、被災された地域の方たちにこそ、今自分の住んでいる場所以外の東北を見渡してみてほしいと思います。他の地域がどんな被害だったのか。それが今、どんな風に変わったのか。あの日のことなんか思い出すのも嫌だ、という気持ちもおありだとは思いますが、それを乗り越えて、行ってみる、見てみる、できるならその土地に住む方々と話してみてはいかがでしょうか。きっと、気持ち新たに、前へ進むことができるような光景と出会うことができると思います。
 
また、東北以外にお住いの方々には、ぜひ、今の東北に訪れてくださいとお伝えしたいですね。震災直後の私のように、ちょっと躊躇されている方もいらっしゃると思うのですが、どこでも自由に行っていいんですよ、どこでもウェルカムですよ、と伝えたいです。遠方から来たと言われると、東北のみなさんきっと喜ばれます。それに、東北は本当に面白いところですから、ぜひ何度も足を運んでいただきたいと思います。
特にライダーのみなさん、私たちライダーには、バイクという武器があります。ご存知の通り、バイクの機動力というのはすごいもので、普通の人では見落としがちなところもくまなく回ることができますし、車では立ち入れないような場所にも行くことができます。バイクで回る東北の面白さは、ツーリングマップルと私が保証しますから、ぜひ出かけてみてください。
 
そして最後に、みなさんがその目で見た風景から何かを感じていただければ、それだけで十分だ、と私は思います。被災された地域の様子や復興へ向かう姿をご自身で見ていただいたときに、なにか自然に湧き上がる思いがあるのではないでしょうか。東北を訪れたみなさん一人ひとりに芽生えた思いこそが、いずれ国を動かすような大きな力になっていくと信じています。
 

賀曽利さんからコラム読者の皆さんへメッセージをいただきました!


 

2016年3月11日早朝。
昭文社本社では、賀曽利さんのお見送りの準備の真っ最中!
社員たちが集まって、賀曽利さんには秘密で用意した横断幕に
メッセージを書き込んでいます。

「伝えたいことが多すぎて書ききれないよ〜」「端まで書いちゃおう!」
「似顔絵も描こうよ!」とみんなでわいわい。

 
そこへ、賀曽利さんの登場です!
「おはようございます!」
 
「賀曽利さん、今回のツーリングも頑張ってくださいね!」「応援しています!」
 
「ありがとうございます!今年も走ってきますよ〜!」
横断幕も喜んでいただけて、サプライズは大成功です!
 
 
賀曽利さんからも、メッセージをいただきました。
「さ〜、東北へ行くゼー!!」
意気込みも十分です!
 
さぁ、いよいよ出発の時間。昭文社社員もみんなでお見送りに向かいます。
「お気をつけて!」「いってらっしゃい!」
 
「それでは、いってきます!」
 
「みなさんもぜひ、東北を訪れてくださいね!」
 
颯爽と出発していった賀曽利さん。今回は一体どんな旅になるのでしょうか?
帰っていらしたら、またゆっくりお話を伺いたいですね。
 
賀曽利さん出発の様子を、ぜひ動画でもご覧ください!
 
賀曽利さんのツーリングの様子は、
昭文社のtwitter、メルマガでもお伝えいたします。
こちらも、ぜひご覧ください。
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賀曽利さんのライフワークとなった鵜ノ子岬~尻屋崎ツーリング。5年間の旅の記録として、賀曽利さんの撮影した写真は数万枚にのぼります。今回、本インタビューを通して賀曽利さんに語っていただいた震災の状況、そしてそこから立ち直り、今現在も復興への歩みを進めている東北の強さを感じていただく一助となればという思いから、特別に一部の写真の公開の許可をいただきました。
震災発生から丸5年を迎えますが、被災地の復興はまだ道半ばというのが現状です。 2011年、賀曽利さんが様々な思いを胸に、つぶさに見て回った当時の状況の凄まじさとともに、被災地域にはまだまだ困難な状況にある方も多くいらっしゃることを、今一度知っていただくきっかけとなればと思います。

記録写真の一部に、瓦礫・浸水地域の画像を含みます。ストレスを感じられる方は、ご覧になるのをお控えください。

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