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  3. 「読書体験は、ほぼ旅行体験だと思う。」 旅は書店から始まる -あの人に聞く旅の本のこと-

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独自のセレクトで人気の代官山 蔦屋書店の旅行書棚。その担当の勝部さんは意外にも(?)小説好きの文学少女だったそう。そのオリジナリティあるセレクトと定番を外さないバランス感覚は一体どうやって培われたのでしょう。

プロフィール
勝部佑香(かつべ ゆか)
代官山 蔦屋書店
旅行コンシェルジュ

●代官山 蔦屋書店公式HPはこちら

http://tsite.jp/daikanyama/

2011年のオープン以来、和書・洋書・ビンテージブックまで及ぶ幅広いセレクトとユニークなイベントで、年々ファンが増すばかりの代官山 蔦屋書店。そして何と言っても代官山 蔦屋書店の魅力は、専門ジャンルに対する深い知識を活かし、本をお薦めしてくれる「コンシェルジュ」の存在。さて、そんな代官山 蔦屋書店の旅行書棚を担当する「旅行コンシェルジュ」って一体どんな人だろう?

代官山 蔦屋書店の勝部です。旅行コンシェルジュとして旅行書棚を主に担当しています。と言いつつ、いきなり矛盾するようですが、私たちが実際に棚に並べている旅行先って、実は私自身行ったことがない場所も多いんですよね。たとえば、現実的にアラスカに行った経験のある書店員さんなんてそんなにいないじゃないですか(笑)。アラスカに行くハードルはなかなか高い(笑)。でも、私も大好きなんですが、ここにある星野道夫さんの本を見ると、まるでアラスカの雄大な大地が目の前にあるような、そこに立っているような迫力や感動をありありと感じます。それは、読書体験がそのまま旅行体験になる瞬間だと思うんです。そういう体験ができるのが、書店の旅行書棚だと思うし、そんな空間になるよう意識して本をセレクトしています。

「私は行ったことがないけれど、こんな本でこんな風にこの場所がご紹介されています」と言って、お客さまに本をお薦めさせていただくことに嘘はないですから、私はあくまで自分の読書体験をもとにした棚づくりやご提案を行うようにしています。

自分の読書体験をもとに、と言ってももちろん、それは自分の好きな本だけをご提案するということではありません。私はこういうものが好き、というお薦めの仕方ではなくて、お客さまがどんな旅をしようとされているのかをお聞きして、それを想像しながら本をお薦めするようにしています。

お客さまがお求めになっている本が書棚にあるのはあたりまえ。でもさらに旅を豊かにできるお薦めしたい本があることが大事だし、それが代官山 蔦屋書店の魅力だと思います。お客さまとじっくりとお話ししながら、ぱっと自然にもう一冊の本が頭に浮かぶのが理想です。

代官山 蔦屋書店はいわゆる大型書店ですが、書棚はまるで専門書店のようにマニアックな品揃えがされていたりします。普通なかなか仕入れないような大判書籍や値の張る洋書などもリスクをとって仕入れできるのが強みになっています。もちろん、あまり売れ残りが多いといけないのですが(笑)、自分が好きで仕入れた本は、やっぱり自然とアピールにも力が入りますから、最終的には手にとっていただけることが多いですね。ガイドブックって旅行にとっていわば絶対必要なものですから、ここでは、さらにプラスアルファになる「もう一冊の本」との出会いをご提供したいと思っています。

お客さまから教えていただくことが多いのも、この仕事の醍醐味だと思います。「こういう年代の方ってこういう本を読まれるんだ」という新鮮な発見があったり、率直に「この本ってどこでお知りになったんですか?」とお聞きすることもあります。そういう様々な本好きの方の趣向や情報が交差する場所が書棚という場所なのかもしれません。私の貴重な情報源となっている「来店してくださるお客さまからお聞きしたこと」が、幾重にも重なり合ってこの書棚が作られていますから。

それからこれは私が感じたことですが、『ことりっぷ』の企画者の方が、テレビ番組に出演されているのを見た時に「あたりまえだけど、ガイドブックを作っている人がいるんだな」という感想を持ったんです。「どんな読者に対してどんなものを作りたいと思って本ができているか」をあらためて知るきっかけになりました。私が日々接する出版社の営業の方達も、この地域にはこういう本が適しているとか、こういう特集がお客さまに喜ばれるなど、積極的にアドバイスしてくれます。「本も書棚も、結局、色んな人たちの知恵や経験が蓄積されたものなんだ」と書店員を仕事にしてからあらためて実感しました。私はいわばそのハブのような役割というか、そういう沢山の人々から集めた情報や思いを最適な表現で届ける役割なんだと思っています。みんなの知恵や経験が重なって最終的に棚として実現している。あたりまえのことかもしれないけど、代官山 蔦屋書店はそれを実感させてくれる空間だと思っています。

私はもともと本好きだったのですが、どちらかというと旅行書というよりは人文書が好きでした。小説などを取り扱いたいなと最初は思っていたんですね。ただ、ラッキーなことに(笑)、旅行書というジャンルはある意味かなり自由なんですよ。アメリカというテーマの書棚だったら、そこに歴史だって、語学だって、写真集だって、もちろん文学だって置ける。旅に行く前に、文化、語学、経済など、幅広いジャンルを十分知っておくことも旅の楽しみを広げることになりますから、旅のお手伝いをするつもりで、自分の得意分野を活かしながらセレクトするようにしています。

私は高校生の頃から本屋さんでアルバイトしていて、ある小さな書店でアルバイトしている時に経験した、「お客さまが一人ひとり、一冊一冊丁寧に吟味して購入する様子」に惹かれてさらにこの仕事に魅力を感じたんですが、代官山 蔦屋書店は、大きな書店でありながらその時と同じ光景があって、書棚を通じて書店員がお客さまとコミュニケーションする喜びをここで感じています。

蔦屋書店のコンシェルジュという仕事は本との出会いを生み出す仕事です。それはいますぐでなくても、数年後に「あのときは興味がなかったり、あのときは読めると思わなかったけど、あのときあの本と一緒に書棚に置いてあったな」と思い出してもらえるような出会いでもいいんです。私自身本好きとしてそういう経験をしてきましたし、知恵や経験を受け継ぐ役割として長い目で見た使命のようなものかもしれないと思っています。

「ガイドブックともう一冊」をテーマに旅本3セットをセレクトして頂きました!

ハワイの歴史から文化まで幅広く扱っているので、興味があるところから読むのがおすすめの『ハワイを知るための60章』と、アロハシャツを集めた『THE ALOHA SHIRT - SPIRIT OF THE ISLANDS』

この2冊を読んでハワイに行ったら、本場のアロハの絵柄が気になってしょうがないかも!?

ご存じですか「九州遺産」。おもしろい文化遺産を知らずに訪れるのはもったいない!九州に行くなら『九州遺産―近現代遺産編101』と『ことりっぷ』のセットで。

地元民イチオシのスポットを、店名も所在地も明かさずに紹介する異色の旅本『鎌倉の地元遺産100』は、車を使わない(異色の!?)ガイドブック『tabitte』と一緒に。

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