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  3. 書店員たちが考える 本の未来、本屋の未来

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前回、『大人の小さな旅』について語ってくれた旭屋書店 有藤さん、リブロ 昼間さん、三省堂書店 内田さん、有隣堂書店 高橋さん、紀伊國屋書店 遠藤さんの5名が再登場。せっかくの機会なので、今後の書店としてのあり方や、本の魅力など気になることを質問させていただきました。熱量のある解答続出の、座談会後編です。

参加者(左から)
旭屋書店 書店営業部 仕入統括課 有藤 誠
リブロ 企画室MD 昼間 匠
三省堂書店 営業本部 営業企画室 内田 剛
有隣堂 店売事業部 高橋由美
紀伊國屋書店 新宿本店 第一課 遠藤貴弘

遠藤:
お店のなかで旅行関連の本を大きく展開するなら、ゴールデンウィークや夏休みなど時期を見計らうことが大事ですね。旅をしたいムードや心理にフィットするような展開をしてあげること。あと、その販売店舗の近くのエリアが特集されている本などは大きな展開がしやすいですね。書店は地域性も大事です。
昼間:
美味しい食べ物が増える秋の時期は、食関連の本をさっと出してあげたりね。時期によって目立つように、並べるアイテムをある程度考えていますね。
高橋:
大きめの書店だとガイドブックのコーナーがあるんですが、エリア別のガイドブックだと、北から南まできれいに並べてはいるんですけど、どうしてもいつのまにかぐちゃぐちゃになっているので苦労はありますね(笑)。お客様が探しやすいように毎回直してはいるんですけど。
昼間:
お客様のことを考えると、出版社ごとに分けずに完全にエリア別で並べてあげたいんですけどね、判型もバラバラなのでそれも難しい。
遠藤:
その分け方だと棚がガタガタしてしまって見栄えも悪くなりますしね。会社別かつ地域別になっているところが多いように感じます。
高橋:
旅行エッセイや地図系の本など、本の種類は違うものの同じ旅行がテーマの本をまとめた棚で展開できれば一番いいんですけど、お店の作りによってはなかなかそれができないところもあって。
内田:
什器など、店舗設計の問題もありますよね。やはり店によって置き方はまちまちですね。
有藤:
うちも大型店舗ぐらいですかね、違うタイプの本がまとめられているのは。本来は棚の近くに関連したものを置いてあげたいんですけどね。
遠藤:
ガイド本だけではなく、副読本としてエッセイなど旅心を喚起させてあげられるものを近くに一緒に置いてあげて、書店で旅心をもっとくすぐってあげたいですね。
昼間:
ジャンルやテーマが同じなのに、置いてあるコーナーが離れちゃっていると、気づきにくいし、探しにくいですよね。
内田:
お店ごとに事情はさまざまですけど、来ていただいた方のためにわかりやすい棚作りを考えていきたいですね。

※取材時は9月上旬

高橋:
問い合わせが一気に増えたのは『月たった2万円のふたりごはん』ですね。テレビの影響ってものすごいなぁと思います。小室圭さんが買われたというニュースをご覧になった方が多くいらして。報道後すごかったです。
内田:
やはり映像化になった作品などは動きがいいですよね、文庫本とか。ガイド系でいうと『ブラタモリ』シリーズは売れていますね。街歩きというブームを作ったという面でもすごいと思います。番組発信ではありますけど、ぶらぶらと散策する楽しみのような礎を作っていますよね。新刊が出ると確実に売れます。また、古地図に興味を持つ方がいたり、他の消費にもつながっています。
昼間:
前回の話の続きになっちゃうんですけど、『大人の小さな旅』シリーズですかね。大宮など駅の中にある店舗など、狭いですし地図類はあまり売れない立地のなかでめちゃめちゃ売れているんでびっくりしますね。土日よりもウィークデーの方が売れています。それも今までの地図の売れ方とはちょっと違うなという感じがします。『ブラタモリ』に近いですが単純なエリアガイドブックではないところがいいんでしょうね。
遠藤:
『東京モダン建築さんぽ』ですかね。高度経済成長期に生まれたおしゃれなビルやマンションなどがたくさん網羅されている、街歩きの楽しさに気づかせてくれる1冊です。東京ならではで素敵ですよ。
有藤:
私が多く発注してしまったというところもあるんですが(笑)、池井戸潤さんの文庫本『銀翼のイカロス』と『花咲舞が黙ってない』の2冊は初速がかなりいいですね。今後も広告等含めてかなり展開していくみたいなので期待しています。
内田:
あと、業界全体ではSNS発信の作品が今すごく多いですね。燃え殻さんの本みたいに。どこかで火が点いてから売れるような流れがありますね。Twitterで人気が出て話題、とか。今年はそれが顕著ですね。
昼間:
レシピ本も、フォトジェニックな料理の作り方とか、自分は作らなくても写真がすごいとか、SNS映えをするものが人気ですね。見せたいんでしょうね、みんな。SNSはすごいです。
高橋:
世の中の流行がダイレクトに書店にも反映されていますよね。人々の生活、消費がリアルに出ているっておもしろいですよね。

遠藤:
今は各店舗でしっかりSNSを活用してお客様とコミュニケーションを取られてますよね。
昼間:
もうSNSは標準装備しなくてはいけないものかもしれないですね。
有藤:
同じ店舗でも、コミック担当とか、担当ごとにSNSがあったりしますからね。
昼間:
SNSで何かをおすすめするときも、同じ商品でも、お店ごとに売り文句が違うからおもしろいですよね。担当の顔が見えるような感じがして。
高橋:
結構、担当者の色が出てきますよね。
遠藤:
バズる仕掛けみたいなものも考えながら、もっと発信していきたいですね。
有藤:
もちろん、書店として直接的なコミュニケーションを良さとして残しつつ、デジタルや最新のものも活用してお客様と接点を持つなど、時代に合わせて変化はしていきたいですね。

内田:
ガイドブックでいうと、紙の本はビジュアルをしっかり見せられますよね。端末で見る画像はあくまで手のひらサイズです。これなら買って帰らないと、これは残しておきたいなと思わせるビジュアルがある本は強いと思います。
有藤:
一人じゃなくて複数で旅行に行くときとかは、行く前からみんなで会って計画を共有することが多いので、スマホで情報を探すよりも紙の本を開いて話したほうが楽ですよね。
昼間:
それぞれが違う版元のガイドブックを持ち寄ったりして共有するのって楽しいですよね。こういうとき、デジタルデバイスより紙のほうが共有しやすい。
高橋:
私は旅行本をパラパラめくって、行きたいところをピックアップして、時間を調べて、自分で計画書を作るっていうのも好きですね。
有藤:
それが楽しいんですよね!
内田:
旅行に関して、旅のしおりを作るのが好きっていう人はいるんですよね。
有藤:
いまだに昔の時刻表なども結構売れたりするんですよ。かつてこの路線があったとか。
内田:
地震を気にされる方が増え、地盤を調べるために古い地形図もよく売れるんですけど、そういうものはやっぱり紙で見たいですよね。

内田:
帯がにぎやかな本は効きますね(笑)。去年の三省堂書店神保町本店の一般書の売上1位は文庫Xなんですけど、タイトルがわからないのにおすすめ文が表紙と帯にびっしり書かれている。お客様は本を選べなくなってるし、探せなくなっていると感じます。なので、ものすごくすすめられたものなら買ってみようという感じになる。あきらかに背中を押されるのを待っているんですよ。
遠藤:
書店がちゃんと本を選びに来る場所だから、その後押しがあると効きますよね。帯についてもそうですし、書店という空間全体で背中を押してあげられればいいですね。
内田:
今の時代、情報があふれているから選ぶのが大変ですよね。選ぶことが、楽しいではなく苦痛になってきている。読書で1番楽しいのは実は好みの本を探す段階だったりするんですけど、選ぶのが面倒だから何かにおすすめされたいんですよね。
有藤:
各書店ごと、担当者がさまざまな本をおすすめしています。目立つところに売れ筋のおすすめ本が置いてあったり、ポップがあったり。それらを見つけて、自分の好みと照らし合わせながら手に取っていただければ。
昼間:
書店に来た人には後押しができるけど、来ない人にはSNSなどでアプローチして、接点を持っておいて。
高橋:
普段書店に来ない人が違う何かをきっかけに書店に来てくれるといいですね。昔、日本人はテニスを始めるときに、まずやってみるんじゃなくて、テニスの本を買うって言われてたんですよ。まずは入門書に手を付ける。だからみんな何かを始めてくれればいいんじゃないかな(笑)。
内田:
消費がブームになるよね。
昼間:
今ってブームが浅かったり細分化していたりして、みんながみんな同じものを見ていないんですよね。その分狭く深くはあるんですけど、でかいブーム、ほしいですね。
内田:
「アメトーーク!」の読書芸人は影響力がハンパないですよ 本当に定期的にやってほしい(笑)。

高橋:
もちろん今まで話したように、楽しく本を選んでもらったり、本を選ぶ後押しをしてあげたいですけど、そのために書籍+αを付けていくのはもう当たり前になっていると思います。書店でいうと、カフェ併設などもそうですよね。本や書店との接点を増やす機会にはなると思います。飲み物と読書は相性がいいので。
内田:
カフェや雑貨などのグッズを扱う店舗は多いですね。新たな価値を提供していくよう、書店も進化していますよ。
高橋:
ワークショップを開くようなこともしていますね。実際に足を運んでもらって体験してもらうような。編集長などにご参加いただくトークイベントなども。
有藤:
特に鉄道系の本とかはコアなファンも多いので、イベントに参加されたい方は多いんですよね。こういうファンを大切にしていきたいですね。本を通じて、書店が交流の場になるのはいいですよね。
内田:
サロンとしての側面をしっかりと出していくこと。書店は、作者や読者の垣根を超えて集える場所なんです。かつては待ち合わせは必ず書店だったんですよね。改めて「待ち合わせは書店で」というキャンペーンを打ち出すのはどうかな。あと、書店の中にトレビの泉のようなものを作ってパワースポット化させるとか(笑)。ここに来るとパワーももらえる、楽しい場所だという場作りをしっかりしていきたいですね。

座談会を終えて

普段何気なく通っている書店も、選びやすい陳列や、季節によって違うこだわりのおすすめ本など、書店員さんによって工夫がされていることに気づくと、ますます楽しめるのではないでしょうか。書店だからこそできる、本との出会いや体験を楽しんでいただきたいと思います。
そしてマップルも、思わず書店で手をのばしたくなるガイドブックや地図を通して、皆さんの旅やおでかけ、そして出版業界全体の盛り上げに貢献していきたいと思います!

旭屋書店:

昭和21年創業し、大阪、東京を中心に展開している書店チェーン。近年では、本をキーワードとした動画投稿サイト「本TUBE」を運営。店頭POPと「本TUBE」で連動した売り場づくりなどが話題になっている。西日本随一の鉄道コーナーがある「なんばCITY店」など、売り場に特徴のある店舗も。
公式HP:http://www.asahiya.com/
(SNSアカウント一覧は公式HP右下)

紀伊國屋書店:

昭和2年、新宿にて創業。新宿本店をはじめ全国主要都市に71店舗、海外に30店舗を構える。ポイントサービス「Kinokuniya Point」、電子書籍配信サービス「Kinoppy」など読書を促す取り組みや、「紀伊國屋ホール」「紀伊國屋書店ベストセラー大賞」などにより多岐にわたって文化活動を応援している。
公式HP:https://www.kinokuniya.co.jp/
SNSアカウント一覧:https://www.kinokuniya.co.jp/c/store/socialmedia.html

三省堂書店:

明治14年、古書店として創業。新刊書店に転換し今に至るが、神保町本店には古書専門のフロアも。書店との繋がりを大切にして生まれた雑貨店「神保町いちのいち」、書籍を1冊ずつ印刷・製本し、販売する「三省堂書店オンデマンド」など書店を通じた新しい取り組みを行っている。
公式HP:https://www.books-sanseido.co.jp/
SNSアカウント一覧:https://www.books-sanseido.co.jp/twitter/

有隣堂:

明治42年創業。神奈川県、東京都、千葉県に54店舗を展開するほか、学校、公共施設、法人を対象とした外商活動や、オフィス用品の通販、図書館・地区センターの運営、音楽教室、カルチャーセンター、出版など事業領域は多岐にわたる。
公式HP:http://www.yurindo.co.jp/storeguide/
SNSアカウント一覧:http://www.yurindo.co.jp/storeguide/twitterinuse

リブロ:

池袋に本社を持つ書店チェーン。LIBLO、パルコブックセンター、よむよむなどのブラントで店舗を展開している。池袋本店は「ニューアカデミズムの聖地」と呼ばれたなど文化発信の場を支え、個性的な売場づくりが特徴。読み聞かせなどができるお子様向け広場「えほんのおうち」、書店の無い離島で書籍などを販売する大型異動書店など、人々の生活に寄りそった取り組みを行っている。
公式HP:http://www.libro.jp/
SNSアカウント一覧:http://www.libro.jp/special/sns.php

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