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「おかえりQR」は、万一ご家族などが迷子になられた際に、発見者が現在の状況や発見場所を伝えることができる新しいサービスです。今回この「おかえりQR」のアドバイザーとしてご協力いただいた明治学院大学の岡本多喜子教授に、現代社会における社会福祉の実情をお伺いしました。

プロフィール
岡本 多喜子
日本社会事業大学大学院修士課程修了。東京都老人総合研究所から東海大学教養学部を経て、1999年明治学院大学社会学部社会福祉学科助教授、2000年4月に同教授となる。2003年度・2004年度社会福祉学科主任、2005年度・2006年度学生相談センター長。サイモン・フレーザー大学老年学部visiting fellow(2007年9月から12月)。2008年度・2009年度大学院主任。2012年度・2013年度社会学部長。2015年7月から2016年3月まで学長補佐。日本老年行動科学会常任理事。主な出版物に『老人福祉法の制定』(誠信書房)『浴風園ケース記録集ー戦前期高齢者施設の「個人記録」110-』(学文社)などがある。

今の日本をみていて感じるのは、人と人とのつながりの弱さです。東日本大震災の復興支援で東北を訪れた際に、地域のみなさんがまわりの方々のことをしっかり把握しているのを感じて、そういえばかつての日本はどこもそうだったと思い返しました。いい意味でも悪い意味でも地域密着が徹底されていて、みんながみんなまわりを心配している。住所や名前をいうと、みんなが誰のことかわかっている。小さい頃の私は、そういうのはどこか見張られているようで嫌だった感覚もありますが、今思うと、それは気遣ってくれていたのだなと理解できるんです。今の日本はそういう気遣いがあまりないように感じます。人々がさりげなく相手をみまもるという気配は、薄れていると思います。

また、格差社会も大きな問題です。ビジネスクラスで海外旅行に行く高齢者がいる一方で、生活保護を受給している高齢者もいる。老人ホームの現状でいうと、6人部屋、7人部屋のような施設にも人が集まります。お金があれば個室で、レクリエーションもある施設。お金がなければ大部屋の施設。社会福祉の中で、高齢者福祉が選別主義から普遍主義というかたちで格差をなくす先頭に立ってきた分野であったはずなのに、今は逆に格差をどんどん広げているように思います。

10年前に本学がある港区の職員と一緒に「救急医療情報キット」というものを制作しました。高齢者が病気で救急車を呼んだ際に、お薬手帳などの医療情報と、かかりつけの病院の診察券のコピー、緊急連絡先などを入れて冷蔵庫に保管しておくと、救急隊が冷蔵庫を探して情報を受け取るという目的のキットです。そのことを知った昭文社さんの社員の方からお声がけいただいたのがきっかけで「おかえりQR」の開発の一部に関わることになりました。「おかえりQR」のように情報をQRコードで読み取るという発想は私にはなかったので、驚きでしたね。今の時代にマッチしていると思います。

おかえりQRは、ご家族などが迷子になられた際に、発見者がQRコードを読み取ることで、登録者にお知らせの通知が届くサービスです。例えば認知症の方などは、保護された時のためにご自身の住所や名前をぶら下げている方もいらっしゃいます。しかしQRコードなら、情報を表に出す必要はない。しかも、発見者の情報は登録者に伝わらないというところも、この情報保護の時代に合っていると思いました。

開発協力にあたり、介護施設などで実習を行っているゼミ生にも協力を仰ぎました。製品の色は何色がいいのか、大きさはどのくらいがいいのか、シールの強度はどうかなどの意見をもらったんです。そして完成した試作品を周囲に見せると反応がよく、使用したいという声も実際に多くあがりました。

例えば知的障害者団体に勤めている方には、「知的障害者の親御さんはこういう製品を待っていました」と言っていただきました。家に閉じ込めておくわけにはいかないけれど、外で迷子になってしまうことも、その度に警察にお世話になってしまうことも困る。しかしこれがあれば安心だと。

「おかえりQR」をつけて迷われている方を見かけたら、率先して声をかけQRコードを読み取る発見者にならなくてはいけません。社会福祉を学んでいる学生たちは声をかけることは平気なようでしたが、そうでない方はなかなか声をかけづらいと思われる方も多いと思います。声をかけることは失礼ではないのか、怒鳴られるのではないかと思ってしまうこともある。親切なつもりで声をかけたらこちらが嫌な思いをしたような経験も私たちはあると思うんです。それでもこちらが気を強く持って、声をかけていくしかないなと思っています。

その際、ちょっとしたコツがあります。例えば、まず肩を叩くのではなく、その人の前に行って「こんにちは」などあいさつをして「なにかお困りですか?」「お手伝いすることありますか?」「どこへおでかけですか?」など声をかけるといいですよ。触られると警戒される方もいます。相手に顔を見せた上で話しかけましょう。警戒心を抱かせずに、コミュニケーションをすることを意識してください。

先日、地域の子どもたちにあいさつをしている方が、警察に注意を受けたという話を聞きました。保護者が、子どもたちに声をかけているあやしい人がいると警察に通報したらしいのです。ニュースで誘拐事件などが放送される度に、親御さんたちは心を痛め、子どもに住所や名前を言わないよう教育します。もちろん防犯の観点からそれは大切です。しかし、そういう風にみんなが警戒していくと、人間同士の関係性は切れてしまいます。安全と言われてきた日本も人々の関係性が希薄になることでより安全ではなくなり、疑心暗鬼となる一方です。この負のループから抜け出すには、やはりあいさつが大切で、そこから始まるのかな、と思います。

社会福祉は昔、「小さな親切大きなお世話」と言われていました。小さな親切だけど、いらない人にはおせっかいなんです。でも大きなお世話だとわかっていても、小さな親切を積み重ねていくことがこの世界だと思います。今はおせっかいというものが許されにくい。おせっかいはわずらわしい部分もありますが、おせっかいを焼くことで、人は人を見守ってきたんだと思います。気軽に声がけをして、おせっかいだと言われる人たちが少しでも増えてほしいですね。用事がなくてもあいさつをするのは普通のこと。その先にちょっと手助けをしてあげるような気持ちが生まれればいいですね。

「おかえりQR」とは、昭文社が提供する地図連動型の迷子支援サービスです。
https://www.mapple-search.biz/

クリックしていただきますと、「おかえりQR」についての詳しい内容が動画でご覧いただけます。

2019年2月5日よりオンライン販売開始!



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